湯檜曽川流域におけるユビソヤナギの生活史特性
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概要
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ユビソヤナギの,性比,着花開始サイズ,フェノロジー,種子寿命,成長特性を,群馬県湯檜曽川の生育地において調査し,ユビソヤナギの生活史特性を明らかにした。ユビソヤナギは,性比に偏りはなく,着花開始サイズはオオバヤナギより小さかった。ユビソヤナギのフェノロジーは,開花や種子散布が他の2種に比べ最も早く,エゾヤナギと似た特性を示した。種子の寿命は2週間程度で,他のヤナギ科植物より短かった。ユビソヤナギの成長特性は,到達直径がオノエヤナギより大きく,オオバヤナギより小さいと推定された。また成長速度は,オノエヤナギより早く,オオバヤナギと同じ程度だった。ユビソヤナギはエゾヤナギと似た生活史特性を有しており,エゾヤナギ同様に上流の礫質河川に適応した種であることが示唆された。ユビソヤナギはオオバヤナギと,フェノロジーや種子の寿命など種子散布に関する生活史特性に大きな違いがみられるため,実生が定着する際に異なるサイトを選択することで共存が可能になっていることが考えられる。また,ユビソヤナギはオノエヤナギより,寿命や成長速度など個体の競争に関わる生活史特性において有利な特性が認められ,このような特性が種の優占度に影響を与えている可能性が示唆された。The sex ratio, reproduction size, phenology, seed longevity and growth characteristics in Salix hukaoana were studied in ordert to clarify the characteristics of this species'life history. The study site was the Yubiso River in Gunma Prefecture, where S. hukaoana, Salix sachalinensis and Toisusu urbaniana coexist. The sex ratio of S. hukaoana was equal to one. This species first reproduced at a smaller size than did T. urbaniana, and the seasons of blossoming and seed dispersal for S. hukaoana were the earliest among the coexisting Salicaceae species. Seed longevity was approximately 2 weeks, comparatively short among species of the Salicacea. Annual ring analysis revealed that S. hukaoana trees lived longer than S. sachalinensis but not as long as T. urbaniana. These characteristics indicate similarities between S. hukaoana and Salix rorida, which is adapted for upstream gravelly rivers. Life history characteristics including phenology and seed dispersal, clearly differentiate S. hukaoana and T. urbaniana. These differences may enable their coexistence, as different sites are available to each species for seedling establishment. In terms of individual competition, S. hukaoana has advantageous characteristics of life span and growth speed relative to S. sachalinensis, which presumably affects colonization and species succession in riparian areas.
- 東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林,The Tokyo University Forests,東京大学大学院農学生命科学研究科,Graduate School of Agricultural and Life Sciences, The University of Tokyoの論文
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