房総海底崖付近の地質 : KT83-20次航海報告
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概要
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1983年12月5日から12日までの淡青丸KT83-20次航海の結果を報告する.調査地域は房総海底崖とその周辺地域である.房総海底崖は巨視的には長さ約60km,西北西に走る崖地形で,中部相模トラフの北壁上部を構成する.相模トラフはフィリピン海(PHS)プレート北端境界である.房総海底崖(Bosc Escarpment BE)の頂部は房総海嶺(Boso Ridge, BR)で,BRはTrench slope breakと考えられる,BEはこの部分でのプレート力学境界域主部を成す可能性が大きく,予想される変位は右横ずれ成分の大きい逆断層運動である.海底崖は南々西に平均10°傾き,崖面上には海上保安庁水路部の20万分の1および100万分の1地形図によれば本稿でC1,C2,C3,C4となづけた杉型に雁行する巨大地割れ群とみられる地形がある。C1~C4は長さ10km以上深さ1km程度である.C1~C4の形成年代は,壁面よりドレッジで採取された泥岩中の有孔虫,珪藻化石,ナンノ化石等の生層序学的年代から2-3百万年前より新しいと考えられる.これは海底の写真が示す一部overhangした急斜面や新しい落石の存在,急すぎてPDR記録がとれない場合のあることなどと調和的である.地割れ群は中村・島崎(1981)が推測したようにPHSプレートと東北日本の相対運動の表現なのであろう.プレートの沈み込みに伴ってプレート上面である海底面は下方へ曲りを示す.この曲りはトラフ軸に近づくに従い急角度となる.またトラフ床面も陸側に傾むくことがある.そうおうこのような例は相模トラフや相鴨トラフ(新称)とその北東延長である鴨川海底谷の南部で観察された.従って,これらの場所に沈み込みがあることを示すのであろう.曲りは北黒瀬の位置で北北東へ0.25°を示す.鴨川海底崖に沿って北東にのびる相模トラフ,相鴨トラフ,鴨川海底谷は1703年元禄関東地震時の逆断層が考えられている場所でもある.The results of the KT83-20 cruise, December 5 through 12, 1983, are summarized. The study area roughly covers the area on and near the Boso Escarpment about 60km long trending WNW. The escarpment consists the upper wall of the northern slopes of the Sagami Trough, the axis of which marks the present day location of the northern material boundary of the Philippine Sea plate. The Boso Escarpment may represent the axial part of the mechanical boundary in this region of the oblique convergence between Honshu island and the Izu-Mariana arc in the Philippine Sea plate. The escarpment inclines an average of about 10 degrees towards the SSW and appears to be carved with four (C1 through C4) left stepping gigantic echelon cracks 10km or so long and a kilometer or so deep. The age of the formation of the supposed cracks are younger than 2-3 Ma by as judged from the biostratigraphic age of the mudstones obtained by dredging from the crack wall. This is consistent with the observation that the walls partly overhang, that young fallen blocks are not uncommon as seen from deep sea photos, and that the sonic records by PDR are often scattered due to the steepness of the wall. The characteristic features in topography associated with the bending of the downgoing side, such as an increasing inclination towards the trench axis and a landward inclined trench floor were observed along the Sagami Trough as well as along the So-o Trough (SOT) and its northeastern extention, the Kamogawa Submarine Canyon (KSC). SOT and KSC lie at the base of the Kamogawa Submarine Cliff, which has been regarded as an active thrust fault line scarp, the last movement being supposed to have occurred in 1703 at the time of the M8.2 earthquake.
- 東京大学地震研究所,Earthquake Research Institute, University of Tokyo,海洋研究所,東京大学理学部,日本大学文理学部,地震研究所,東京大学教養学部,九州大学理学部,富山大学理学部,日本大学文理学部,海洋研究所の論文
- 1984-10-20
著者
-
竹内 章
富山大学
-
飯山 敏道
東大・理
-
中村 一明
東大震研
-
中村 一明
東京大学地震研究所
-
中村 保夫
東京大学教養学部
-
谷口 英嗣
駒沢大学高校
-
古田 俊夫
株式会社グローバルオーシャンディベロップメント 川崎地質株式会社本社技術本部
-
渡辺 正晴
東大・海洋研
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