北海道中央部の広葉樹林に隣接するトドマツ人工林での種子散布(<特集>森林の"境目"の生態的プロセスを探る)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
北海道中央部の落葉広葉樹林に隣接したトドマツ人工林において、広葉樹の種子散布が種子供給源からの距離にどのように影響を受けているのか、また、どのような場所に散布されているのかを明らかにするため、広葉樹林と針葉樹人工林の境界域に100m×200mの調査地を設置し、散布様式(風散布、鳥被食散布、貯食散布)ごとの種子散布状況を調べた。風散布型と鳥被食散布型の種子散布を評価するため、調査地内に100個(5列各20個)の種子トラップを格子状に10m間隔で設置した。アサダ、イタヤカエデ、シラカンバなど風散布種子は、母樹からの距離に依存して散布数が著しく減少した。長距離散布されるシラカンバを除くと、トドマツ人工林内に散布される種子数は極めて少なく、全トラップで回収された種子の4%程度であった。それに対して鳥被食散布のミズキ種子は、人工林内へも18%の種子が散布されており、散布が同時期に結実する植物に影響を受けていた。貯食散布型の種子散布を評価するため、境界域に設置した磁石付きミズナラ堅果の分散調査、ミズナラとカシワの当年生実生の分布調査を行った。磁石付き堅果の最大散布距離は、広葉樹林では32m、人工林では71mに達していたが、約70%の堅果は餌台から10m以内の比較的近距離に散布され、平均散布距離はそれぞれ8.1m、12.6mであった。一方、当年生実生の分布は、野ネズミの貯食場所とは明らかに異なる傾向を示し、人工林では野ネズミ以外の散布者が存在していることが示唆された。以上のことから、広葉樹林に近い場所ほど種子の供給量が多いが、鳥被食散布種子と貯食散布種子では散布者の行動に影響を受けるため、複雑であることがわかった。
- 2013-07-30
著者
-
今 博計
北海道立総合研究機構林業試験場
-
倉本 恵生
森林総研
-
倉本 恵生
森林総研四国支所
-
南野 一博
北海道立総合研究機構林業試験場道南支場
-
明石 信廣
北海道立総合研究機構林業試験場
-
倉本 惠生
森林総合研 北海道支所
-
飯田 滋生
森林総合研 北海道支所
-
南野 一博
北海道立総合研究機構林業試験場
関連論文
- 北海道における広葉樹林化の可能性(広葉樹林への誘導の可能性)
- モニタリングサイト1000森林・草原調査コアサイト・準コアサイトの毎木調査データの概要(学術情報)
- トドマツ人工林はエゾシカの越冬地として有効か?
- エゾシカの低密度地域における生息密度指標
- シカの蹄圧を模した積雪硬度測定ポールによるシカ沈下量の推定
- 多雪地におけるエゾシカの越冬期の食性と生息地選択
- 盆栽状のカラマツはどうなったか?--エゾシカに食害されたカラマツの生育状況
- 自動撮影カメラで確認された北海道立林業試験場光珠内実験林における哺乳類相
- 手動ピストン式シンウォールサンプラーによるマングローブ泥炭の不撹乱コアの採取と地下部炭素蓄積量の推定
- 半島マレーシアで開始した丘陵フタバガキ林での熱帯林研究の紹介
- 都市近郊二次林の遷移と管理(都市近郊林)
- 北海道における広葉樹林化の可能性
- 遺伝子組換えカンバの生物多様性影響評価に向けて--スカイバーチを用いた日本産カンバと外国産カンバの種間交雑性評価
- 森林の多面的機能に関わる土壌・生物要因の林相間比較(3)小型哺乳類
- 北海道のブナ人工林における獣害の発生実態
- 1985年から2005年の野ネズミ発生予察調査資料に基づくエゾヤチネズミ発生予想式
- エゾシカ食害防除資材を設置したミズナラの6年間の生育経過
- 道央地域におけるエゾシカ人工林被害の実態とその特徴
- 四国のヒノキ人工林において台風が落葉動態に及ぼす影響
- 簡易なエゾシカ侵入防止柵による森林被害防除の試み
- 四国の中標高域における天然林とこれに隣接する針葉樹人工林の埋土種子組成
- 針葉樹人工林における落葉生産の年変動:間伐と気象条件の影響
- 黒尊自然観察教育林の鳥類群集と樹種構成の特徴
- S1-15 外部からの窒素供給がカシ類落葉の分解特性に及ぼす影響(S1.酸性雨の問題を見直す2〜森林生態系の窒素循環,2007年度東京大会)
- 21 四国地域のスギ・ヒノキ林における窒素と水資源の利用様式(関西支部講演会,日本土壌肥料学会 支部講演会講演要旨集 2005年度)
- ヒノキ林における間伐が生態系の窒素動態に及ぼす影響(関西支部講演会, 日本土壌肥料学会支部講演会講演要旨集2004年度)
- 奥多摩演習林におけるホオノキの開芽について(第5回大会ポスター発表要旨)
- カバノキの交雑による遺伝子流出--遺伝子組換えカバノキは北海道のカンバ類と交雑するか?
- エゾユキウサギの広葉樹3樹種に対する樹皮食害と忌避剤による防除効果
- 道南地域におけるエゾシカ人工林被害と天然林への影響
- 北海道西部におけるエゾシカの冬期の食性と積雪の影響
- 天然林択伐施業での更新を確保する : 新たな地表処理技術の開発実証
- ヒノキ・ツガ天然生林における下層植生の葉面積推定
- 四国地域のヒノキ林における落葉の季節性と窒素利用の関係
- 複層林スギ上木の後生枝発生の実態 : 発生位置と枝齢,枝径について
- ヒノキ・ツガ天然林内の実生の生残
- 四万十川流域の暖温帯上部天然林におけるリターフォール量の季節変化
- クロバイの更新と生育特性
- アカガシの開花結実と堅果の発達過程における生残
- 密植したタイワンフウ若齢林分の構造
- ヒノキ,ツガ,モミの種子散布と実生の発生・消長
- 四国地域のブナ林の分布とパッチサイズ
- LIDARによる落葉広葉樹林の風倒害の評価
- 間伐がヒノキ林の落葉量と季節性に及ぼす影響
- ミズナラ林冠木の樹冠頂部でのシュート生産と脱落
- ミズナラ天然林における林冠内の光分布
- ALOS衛星による十勝地方の造林未済地把握の試み(会員研究発表論文)
- 上木伐採により損傷を受けたヒバ下木の成長と腐朽・変色(会員研究発表論文)
- ブナ円形密度試験地における植栽密度と形質の関係(会員研究発表論文)
- 建機ベースの林業機械の走行繰り返しによるトドマツの地表部側根の損傷発生(会員研究発表論文)
- 択伐後の針広混交林に植栽したエゾマツ苗木の9年間の生残と成長(会員研究発表論文)
- 北海道中央部の広葉樹林に隣接するトドマツ人工林での種子散布(森林の"境目"の生態的プロセスを探る)
- 択伐天然林の新たな更新補助作業法の検証 : 2つの改良型更新補助作業法の施工後2年目の更新状況(会員研究発表論文)
- 簡易なチェックシートによるエゾシカの天然林への影響評価
- 札幌市郊外の落葉広葉樹林における地上部非同化部呼吸量の推定(会員研究発表論文)
- エゾシカによるアオダモの食害と腐朽(会員研究発表論文)
- 札幌市郊外の落葉広葉樹林における現存量に関する諸量の推定(II) : 葉面積指数とその季節変化について(会員研究発表論文)
- 札幌市郊外の落葉広葉樹林における現存量に関する諸量の推定(I) : 林分現存量と葉面積の垂直分布について(会員研究発表論文)
- 落葉広葉樹天然二次林における5年間の動態(会員研究発表論文)
- 札幌市郊外の落葉広葉樹林における地上部純生産量の推定(会員研究発表論文)
- 札幌市郊外の落葉広葉樹林における上層林冠木の25年間の動態(会員研究発表論文)
- 台風撹乱を受けた落葉広葉樹林におけるササの反応と根返り木の生残率(会員研究発表論文)
- 広葉樹林化におけるエゾシカ食害のリスク(人工林を広葉樹林へと誘導する,特別講演)
- シカの蹄圧を模した積雪硬度測定ポールによるシカ沈下量の推定(会員研究発表論文)
- エゾシカの低密度地域における生息密度指標(会員研究発表論文)
- トドマツ人工林はエゾシカの越冬地として有効か?(会員研究発表論文)
- 十勝管内における造林未済地発生の要因解析(会員研究発表論文)
- 択伐天然林の更新補助作業の検討 : 小面積樹冠下地がきと人工根返し処理の翌年の更新状況(会員研究発表論文)
- 遺伝子組換えカンバと北海道産カンバ類の交雑リスクの推定 : 遺伝子組換えカンバ原種花粉による交雑種子の発芽と実生の生育状況(会員研究発表論文)
- 北海道の天然林内における多孔菌類の多様性・群集構造への林内粗大有機物の影響(会員研究発表論文)
- 朝日天然林施業試験地における成長経過 : 伐採木の年輪解析(会員研究発表論文)
- ヨーロッパシラカンパと道産カンバ類3種の交雑における果実の形質(会員研究発表論文)
- 林内性低木種ナニワズの光合成特性(会員研究発表論文)
- 天然林における択伐作業による林分被害について : 日高天然林における被害状況(会員研究発表論文)
- 落葉広葉樹二次林における更新樹とネズミの動態(会員研究発表論文)
- カラマツ人工林列(帯)状伐採地における散光透過率の推定法(会員研究発表論文)
- 天然林の林冠内におけるミズナラ堅果生産の垂直変異(会員研究発表論文)
- ミズナラの天然更新における野ネズミとササの複合作用(会員研究発表論文)