簡易なチェックシートによるエゾシカの天然林への影響評価
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
天然林におけるシカの影響を評価するには, 森林の種組成や構造の違い, 剥皮や枝葉の採食など影響の多様な形態を考慮する必要がある。また, 広域の調査には多くの関係者が簡便かつ客観的に評価できる手法が望ましい。そこで, シカの食痕や足跡等に関する簡易なチェックシートを用いた調査を実施した。チェックシートは林野庁北海道森林管理局の森林管理署職員によって記入され, このうち天然林を対象とした1,371件を解析に用いた。シカの食痕等に関する10項目の回答を用いて多重対応分析を行ったところ, 各地点のスコアはシカが多い, 少ない, わからないという三つの方向を含む平面上にプロットされた。第1主成分は狩猟者によるシカ目撃効率 (SPUE) と有意な相関があった。食痕の有無や不嗜好植物の量は「わからない」とする回答が多く, 著者らが同一林小班内で確認した結果と比較したところ, 食痕があるとする回答が少なかったことから, 森林管理署職員の回答には食痕の見落としの可能性が示唆された。第1主成分のスコアをもとに, クリギング法によって推定された北海道全体の森林における評価結果は, 従来の情報と比較して, 妥当なものと考えられた。
- 日本森林学会の論文
著者
-
渡辺 修
さっぽろ自然調査館
-
荻原 裕
北海道森林管理局
-
宇野 裕之
北海道立総合研究機構・環境地質研究本部・環境科学研究センター自然環境部
-
明石 信廣
北海道立総合研究機構林業試験場
-
藤田 真人
株式会社セ・プラン
関連論文
- マルハナバチ一斉調査(第三報)
- 針広混交林における林木種の萌芽特性と個体群動態
- 北海道渡島地方小渓流河川における魚類の春季生息場所選択 : 実験的管理における作業仮説の提示
- エゾシカの被食を受けた天然林の5年間の変化--日高・胆振国有林における3地域の比較
- 農村域における野生動物の価値認識と保護・管理政策への意向 : 愛知県東部農業「被害」地域における価値認識調査
- 冷温帯針広混交林のギャップ形成パターンが林木種の更新過程に与える影響
- ニセコ神仙沼リフレッシュ事業の推進における現場と研究者の協働(現場の要請を受けての研究5)
- 北海道における15年間のアカギツネ個体数の動向
- 北海道西部におけるエゾシカの冬期の食性と積雪の影響
- 小規模博物館の連携・ネットワークの試みと可能性 : 北海道における現状と取り組み(博物館と生態学(18))
- 北海道における15年間のアカギツネ個体数の動向
- 可猟区におけるエゾシカ(Cervus nippon yesoensis)の日周行動パターンとブラインド狙撃に反応した行動変化 : ─道有林釧路管理区内の施業地における事例─
- 阿寒国立公園におけるエゾシカ生息密度の低下に伴う林床植生の変化
- エゾシカの過増加と森林植生 : 野生動物管理の視点(北方森林学会大会シンポジウム「生物多様性保全をいかに地域で具現化するか?」)
- 北海道中央部の広葉樹林に隣接するトドマツ人工林での種子散布(森林の"境目"の生態的プロセスを探る)
- 簡易なチェックシートによるエゾシカの天然林への影響評価
- 地域住民と自然利用の関わり : 士幌高原道を事例として(会員研究発表論文)
- 行列モデルによる針広混交林の動態解析(会員研究発表論文)
- 広葉樹林化におけるエゾシカ食害のリスク(人工林を広葉樹林へと誘導する,特別講演)
- 北海道の国立公園における利用者・住民の自然認識(I) : 国立公園の利用形態とその意識(会員研究発表論文)
- 野幌国有林の代表的な林分における土壌の化学性(会員研究発表論文)
- 知床国立公園内針広混交林の生長様式 : トドマツ優占林における上層木密度と生長の関係(会員研究発表論文)
- 知床国立公園における針広混交林の種組成と構造 : 最大サイズと階層構造が多様性に与える影響(会員研究発表論文)
- 北海道の国立公園における利用者・住民の自然認識(III) : 自然利用において求められる施設(会員研究発表論文)
- 北海道の国立公園における利用者・住民の自然認識(II) : 都市住民の自然認識形態の分析(会員研究発表論文)
- 阿寒国立公園におけるエゾシカ生息密度の低下に伴う林床植生の変化