フィンランドにおける伐出作業の生産性とコスト
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概要
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フィンランドでは,木材関連製品の輸出額が国全体の40%を占めていることから分かるように,林業・林産業は国の重要産業である。北欧諸国との競争に打ちかって木材関連製品を海外へ輸出し続けるためにも,いかにして低価格でしかも安定して木材を林産業に供給するかがフィンランドの林業にかせられた課題であるが,その鍵を握るのが伐出作業である。フィンランドでは,最近の木材需要の増加と林業労働者の減少のなかでこれまでにない高能率な伐出作業システムの開発に迫られていたが,その結果確立されたのが載荷形のフォアワーダを使った定尺材運搬方式である。なかでも,ワングリップ・ハーベスタは,プロセッサやツーグリップ・ハーベスタなど他の木材処理機に比べて有効性が高く,これとフォアワーダを組み合わせたシステムとして定着化しつつある。本報告はフィンランドの伐出作業の生産性とコストの現状を把握することを主な目的として,加えてそれらの背景となっている森林・林業の条件について主に既往の文献から分析するものであるが,作業の一部は現地調査を行いその妥当性を確認した。フィンランドの年間木材生産量は5,500-6,000万m^3であるが,その約2/3は機械コントラクタによって生産され,残りの約1/3は森林所有者によって生産されている。一般にコントラクタによる作業は生産性も大きく機械化率も高いので,労働生産性も大きく伐出コストも小さいが,これに対して森林所有者による作業は生産も小さく機械化率も低いので,生産性も低く概してコストも高い。また,生産量の約1/3は間伐材であるが,間伐では機械化が難しく,従って生産性が低くコストも高い場合が多い。運材は59%がトラックで行われ,残りの26%が流送でまた15%が鉄道で行われている。伐倒・造材作業および集材作業の労働生産性(m^3/人・日)とコスト(円/m^3)を皆伐および間伐ごとに機械化伐採作業と非機械化伐採作業について求めた。機械化伐採作業の労働生産性は非機械化作業より大きいが,しかしコストの面からみると,皆伐作業ではコスト削減効果を上げるだけの生産性が上がっているものの間伐作業特に初期間伐ではコストの削減効果を上げるだけの生産性が上がっていないことがわかる。フィンランドの伐出作業に関する今後の課題としては,機械の高級化にともなう機械コストの上昇をどのようにして下げるか特に生産性の上がらない間伐において問題になろう。また,森林所有者によって行われる小規模生産に適する機械化技術の開発および全森林面積の1/3に及ぶピートランドにおける伐出技術の開発などがあげられる。
- 森林利用学会の論文
- 1992-12-01
著者
-
猪内 正雄
岩手大学農学部農林環境科学科森林科学講座
-
猪内 正雄
岩手大学演習林(元)
-
猪内 正雄
岩手大学農学部
-
Eeronheimo Olli
Finnish Forest Research Institute
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