タケ類天狗巣病が竹林の種組成・種多様性に与える影響
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概要
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タケ類天狗巣病が竹林の林分構造や植物の種組成・種多様性に与える影響を明らかにするために、兵庫県三田市の竹林11地点を天狗巣病症状に応じて、健全、初期、衰退、再生の4段階に区分し、健全20区、初期36区、衰退20区、再生32区(合計108方形区)で天狗巣病の発症状況、林床の種組成と方形区(6.25m^2)あたりの出現種数について調査した。結果、健全段階から再生段階にかけて方形区あたりの枯死稈の本数は1.05本から4.00本と多くなる傾向を示した。一方、高木層の平均植被率は94.8%から23.5%と低くなる傾向を、第1低木層の平均植被率は2.8%から85.0%と高くなる傾向を示した。また第2低木層と草本層の平均植被率は健全段階から衰退段階で多くなり、衰退段階から再生段階にかけて少なくなる傾向を示した。方形区あたりの総出現種数は健全8.5種、初期9.3種、衰退20.4種、再生10.6種と衰退段階でもっとも多くなる傾向を示した。種組成は、衰退林分では草本層に埋土種子由来と推測される実生や稚樹が多く、照葉樹や常緑多年草、里山の主要構成種となる夏緑高木の実生が比較的高い頻度でみられたほか、つる植物や多年草が多種類確認された。再生林分では第1低木層でマダケの再生稈が優占するほか、夏緑低木やつる植物が低頻度、低被度で混生し、第2低木層、草本層では夏緑二次林の主要構成種よりも照葉高木・照葉低木の方が高い頻度、被度で生育していた。これらのことから、竹林で天狗巣病の症状が進行すると、高木層での稈の枯死、植被率の低下により林床の光環境が改善されて一時的に林床における出現種数や被度の増加が起こるが、その後に第1低木層で再生稈が優占することで光環境が悪化して、出現種数や草本層の植物の被度は健全林分と同等まで低下すると考えられた。また種組成調査の結果から、再生林分は、短期的には先駆性植物が疎な高木層を構成し低木層にマダケの再生桿が優占する群落へと遷移すること、中長期的には種組成の単調な照葉二次林へと遷移することが推測された。
- 2010-05-30
著者
-
服部 保
兵庫県立大学自然・環境科学研究所
-
南山 典子
兵庫県立人と自然の博物館
-
黒田 有寿茂
兵庫県立大学自然・環境科学研究所
-
橋本 佳延
兵庫県立人と自然の博物館自然・環境再生研究部
-
石田 弘明
兵庫県立大学自然・環境科学研究所
-
服部 保
兵庫県立人と自然の博物館自然・環境再生研究部
-
黒田 有寿茂
兵庫県立人と自然の博物館自然・環境再生研究部
-
石田 弘明
兵庫県立人と自然の博物館自然・環境再生研究部
-
服部 保
神戸大学自然科学研究科
-
服部 保
兵庫県立人と自然の博物館:姫路工業大学自然・環境科学研究所
-
服部 保
神戸大学大学院自然科学研究科
-
服部 保
姫路工業大学自然環境科学研究所:兵庫県立人と自然の博物館
-
石田 弘明
兵庫県立大学 自然・環境科学研究所兵庫県立人と自然の博物館
-
ISHIDA Hiroaki
Institute of Natural and Environmental Sciences, University of Hyogo
-
橋本 佳延
兵庫県立人と自然の博物館
-
服部 保
兵庫県立大学自然・環境科学研究所:兵庫県立人と自然の博物館
-
黒田 有寿茂
兵庫県立大学自然・環境科学研究所:兵庫県立人と自然の博物館
-
石田 弘明
兵庫県立大学 自然・環境科学研究所
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