兵庫県北部の棚田,放棄棚田,圃場整備水田における畦畔法面草原の生態的特性の比較
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1. 兵庫県北部に分布する3タイプの畦畔法面草原,すなわち1)棚田の畦畔法面草原(以下,伝統型草原),2)管理が放棄されている伝統型草原(以下,放棄型草原),3)圃場整備水田の畦畔法面草原(以下,整備型草原)を対象に植生調査を実施し,各草原タイプの階層構造,優占種,種組成,種多様性(調査区あたりの出現種数)を比較した. 2. 伝統型草原と整備型草原は平均群落高が0.5m前後でチガヤが優占していたが,放棄型草原は平均群落高が2.0m(最大値は2.7m)でススキが優占していた. 3. DCAによって得られた調査区のスコアとWI,傾斜角度,斜面方位の相関係数は1軸,2軸ともに低かった.また,DCAの1軸スコアと2軸スコアから構成される座標平面上では各草原タイプはそれぞれ独自の領域に分布していた.これらのことから,3草原タイプの種組成の相違には管理放棄と圃場整備が大きく関係していると考えられた. 4. 放棄型草原では伝統型草原の構成種が数多く欠落する傾向にあった.また,種多様性は伝統型草原の方が放棄型草原よりも有意に高く,その差は大きかった. 5. 整備型草原は伝統型草原よりも種組成が単純で種多様性も低い傾向にあった.全種数に対する外来種数の比率は整備型草原の方が伝統型草原よりも高かったが,外来種数は両草原タイプともに少なく有意な差は認められなかった. 6. 一年生草本の種多様性は伝統型草原と整備型草原の間でよく似ていたが,多年生草本の種多様性は伝統型草原の方が整備型草原よりも明らかに高かった. 7. 路傍草本の種数を伝統型草原と整備型草原の間で比較したところ,両草原タイプ間の差は一年生草本,多年生草本ともに小さかった.また,伝統型草原を構成する一年生草本の大半は路傍草本であった.これらのことから,一年生草本の種多様性が圃場整備後に復元しやすい理由の一つは,整備型草原の周囲に存在する路傍が整備型草原に対する一年生草本の種子供給源として機能しているからと考えられた. 8. 放棄型草原の調査地から採取した土壌サンプルをもとに実生出現法による種子発芽実験を行った.埋土種子から発芽した種は71種であったが,このうち伝統型草原に出現した種は38種であった. 9. 放棄型草原で欠落する傾向を示した伝統型草原構成種48種のうち,埋土種子から発芽した種は17種にすぎなかった.このことから,放棄型草原の管理再開による伝統型草原の種組成の復元に埋土種子集団が寄与する程度は小さいと考えられた.
- 2013-06-25
著者
-
栃本 大介
財団法人ひょうご環境創造協会
-
石田 弘明
兵庫県立大学自然・環境科学研究所
-
石田 弘明
兵庫県立大学 自然・環境科学研究所兵庫県立人と自然の博物館
-
江間 薫
近畿中国森林管理局
-
栃本 大介
兵庫県立大学大学院環境人間学研究科
-
石田 弘明
兵庫県立大学 自然・環境科学研究所
-
黒田 有寿茂
兵庫県立大学 自然・環境科学研究所
-
黒田 有寿茂
兵庫県立大・自然・環境
関連論文
- 宮崎県東諸県郡綾町川中の照葉原生林におけるニホンジカの採食の影響
- 宮崎神宮社叢の種多様性の特性
- タケ類天狗巣病が竹林の種組成・種多様性に与える影響
- 法面保護工の施工された植栽林下層植生の種組成と構造 : シダ植物の定着とその要因に着目して
- 宮崎県綾町大森岳の照葉樹林における着生植物の種多様性および腫組成
- 宮崎県綾町川中の照葉樹林における着生植物の種多様性
- 間伐木を利用した筋工による森林表土の流亡抑制 (第41回[日本緑化工学会]大会特集)
- 九州南東部における照葉樹の原生林,自然林,二次林の種組成および種多様性の比較
- 対馬における照葉樹の原生林,自然林,二次林の種組成および種多様性の比較
- ニホンジカの強度採食下に発達するイワヒメワラビ群落の生態的特性とその緑化への応用
- 九州南部の照葉樹林における維管束着生植物の種多様性および種組成
- 都市域の孤立化した夏緑二次林における緑化・園芸樹木の逸出状況とその特徴
- 宮崎県綾町川中における微地形条件に対する照葉樹林構成種及び種多様性の分布
- タケ類天狗巣病による西日本の竹林の衰退
- 照葉人工林の種多様化に関する研究(平成15年度日本造園学会全国大会 研究発表論文集(21))
- 臨海部における照葉人工林の種多様性と種子供給源の関係(平成13年度 日本造園学会研究発表論文集(19))
- 宮崎県東諸県郡綾町川中の照葉原生林におけるニホンジカの採食の影響
- 間伐木を利用した筋工による森林表土の流亡抑制
- 森林の侵食土砂中に含まれる埋土種子量
- 兵庫県におけるハイノキの分布をどのように考えるのか
- 照葉樹林成熟相とギャップ相の種組成および種多様性の比較
- 兵庫県三田市における市民による里山林管理の一手法(平成16年度日本造園学会全国大会研究発表論文集(22))
- 照葉樹林フロラの特徴と絶滅のおそれのある照葉樹林構成種の現状(平成14年度 日本造園学会研究発表論文集(20))
- 中国雲南省菜陽河自然保護区に分布するBetula alnoides林の構造と動態
- タケ類天狗巣病発症による竹林の衰退と種組成の変化(平成18年度日本造園学会全国大会研究発表論文集(24))
- 猪名川上流域における希少樹種エドヒガンの生育立地と個体群構造
- 六甲山におけるブナ・イヌブナ個体群の現状とブナ林の復元可能性(平成18年度日本造園学会全国大会研究発表論文集(24))
- 小面積化が孤立照葉樹林の種多様性に及ぼす影響 : 異なる空間スケールの種多様性と樹林面積の関係
- 二次植生の評価方法と保全・管理について
- 里山の分断・孤立化による生物多様性(種多様性)の問題 (特集:里山は今)
- 扇ノ山のブナ林におけるササ被度と林床植生の種組成および種多様性の関係
- 兵庫県南東部における照葉樹林の樹林面積と種多様性,種組成の関係
- 布団籠工の表層におけるシダ群落の成立とその要因について (平成21年度日本造園学会全国大会研究発表論文集(27))
- 三田市フラワータウンにおける蝶類群集からみた植生の自然性評価
- 国内における外来樹木トウネズミモチの野外逸出(平成17年度日本造園学会全国大会研究発表論文集(23))
- 大阪府千里丘陵一帯に残存する孤立二次林の樹林面積と種多様性,種組成の関係
- 日本海側における孤立化した照葉樹林の樹林面積と種多様性, 種組成の関係
- ニホンジカが暖温帯夏緑二次林の種多様性と種組成に与える影響
- 木製ブロック法留工の施工地におけるシダ群落の成立とその緑化への応用
- 兵庫県丸山湿原における湧水湿地の保全を目的とした植生管理 -管理後5年目の湿原面積と種多様性保全の効果-
- 布団籠工の表層におけるシダ群落の成立とその要因について
- ニホンジカが暖温帯夏緑二次林の種多様性と種組成に与える影響
- 兵庫県里山域のニホンジカ生息地における樹木種の動態
- 絶滅危惧植物ツクシガヤの種子発芽特性と種子保存方法
- 宮崎県中部における照葉樹林の樹林面積と種多様性,種組成の関係
- 湧水湿地における周辺樹木の生長による湿原面積の縮小と種多様性の変化 (平成24年度日本造園学会全国大会研究発表論文集(30))
- 八丈島における照葉樹林の成立要因 : 特に土地利用について
- 淡路島の森林伐採跡地に分布する外来木本ナンキンハゼ群落の生態的特性と成因
- 屋久島低地部の照葉二次林に対するヤクシカの影響とその樹林の自然性評価
- お役に立ちます!最新研究紹介 ニホンジカの不嗜好性植物の緑化への応用
- 八丈島における照葉樹林の成立要因 : 特に土地利用について
- 兵庫県丸山湿原における湧水湿地の保全を目的とした植生管理による湿原面積と種多様性の変化
- 屋久島低地部の照葉二次林に対するヤクシカの影響とその樹林の自然性評価
- 八丈島における照葉樹林の成立要因 : 特に土地利用について
- 淡路島の森林伐採跡地に分布する外来木本ナンキンハゼ群落の生態的特性と成因
- 照葉樹林帯の植生一次遷移 : 特に桜島の溶岩原について
- 兵庫県北部の棚田,放棄棚田,圃場整備水田における畦畔法面草原の生態的特性の比較
- 中国雲南省南部の常緑広葉樹林と落葉広葉樹林におけるシダ植物の種多様性,種組成,被度の比較
- コケ植物のアレロパシー活性について(ポスター発表,第35回日本蘚苔類学会宮崎大会特集)