重症外傷における血清イオン化カルシウム濃度 : 臨床的ならびに実験的検討

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ショックや組織虚血・再灌流時の細胞障害・細胞死の主な原因が,急速な血清中イオン化カルシウム(iCa^<2+>)の細胞内流入であることが最近の研究で明らかになっている.重症外傷患者は,ショックや呼吸不全を伴い組織虚血を合併することから,受傷後の血清中iCa^<2+>の低下が外傷患者の重症度・緊急度や予後を推定するのに有用である可能性がある.また,侵襲のメディエーターであるNO合成酵素(cNOS)は血清中Ca^<2+>の細胞内流入により活性化されることが報告されている.本研究では,ラットを用いた大量出血モデルにおいて,iCa^<2+>,組織内NOおよび炎症性サイトカインであるIL-8,TNF-αを測定し同時に組織病理像を検討することにより,重症外傷の主病態である大量出血が血清中iCa^<2+>,組織内NO,IL-8,TNF-αに影響を与えるか否かを検討した.また,救急搬送された外傷症例において,搬入時および入院後に血清中iCa^<2+>を測定し,injury severity score(ISS),受傷から搬入までの時間,ショック,血液ガス所見,臨床経過,予後等の各指標と,血清中iCa^<2+>との関連を検討することにより,外傷患者における血清中iCa^<2+>の診断,治療上の意義を検討した.その結果,SDラットを用いた大量出血実験モデルにおいて,全血液の30%放血後iCa^<2+>は有意に低下し,IL-8,TNF-αは有意に上昇した.また,組織内NOは経時的に増加傾向を示した.また,外傷患者の血清中iCa^<2+>は死亡に至る重症例,ISS高値,大量出血,ショック,代謝性アシドーシス等により低下した.以上の結果から血清中iCa^<2+>は,外傷の重症度,治療効果,予後を推定する有用な血液学的指標となりうると考えられた.
東京女子医科大学の論文
2002-11-25

重症外傷における血清イオン化カルシウム濃度 : 臨床的ならびに実験的検討

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