外傷性DICの病態発生との関連におけるラットの出血性侵襲およびエンドトキシン適用後の組織NO産生の比較
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概要
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先に,ラットにおいて出血性侵襲後のDICの発症を確認し,その際組織一酸化窒素(NO)産生の早期の増加を認めた.これは,NO産生の増加はDICの早期診断の指標としての可能性を示唆した.今回の研究では,ラットにおける出血性侵襲後の組織NO産生を,エンドトキシン適用後のラットと比較しながら検討した.Pentobarbital麻酔下のラットを用いた.開腹の後,腎にNO選択性電極を設置して組織NO産生をリアルタイムで記録した.ラットにおいて出血性侵襲(推定全血量の30%量の放血)およびエンドトキシン投与(LPS, E. coli, 10mg/kgiv)により,凝固線溶系,血中サイトカインレベルおよび組織病理学的所見から,DICの発症を確認した.出血性侵襲後のNO産生は,早期(侵襲後1hr以内)に速やかに増加してピークに達した.これに対し,エンドトキシン投与後のNO産生は,早期には全く認められず,2〜3hr後より緩徐な増加が認められるようになり,4〜6hr後にピークに達した.出血性侵襲およびエンドトキシン投与後のN-(dithiocarboxy) sarcosine, disodiumsalt, dihydrate (DTCSNa)を用いた電子スピン共鳴スペクトラム分析(ESR)によりNO-Fe-DTCSのシグナルを検出した.出血性侵襲による早期のN0産生は選択的iNOS阻害剤S-methylisothiourea (SMT, 5mg/kgiv)では殆ど影響をうけず,非選択的NOS阻害剤N^G-monomethyl-L-arginine (L-NMMA, 50mg/kgiv)により抑制され,cNOSの活性化によるものであり,iNOSの関与のないことが強く示唆された.これに対し,エンドトキシン投与による後期のNO産生はSMTおよびL-NMMAの添加により抑制され,主としてiNOSの誘導によることが強く示唆された.かくして,出血性侵襲およびエンドトキシン適用後の組織NO産生の過程の差異が確認された.これらとDICの病態との詳細な関連性は今後の検討に残されている.
- 東京女子医科大学の論文
- 2000-03-25
著者
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中川 隆雄
東京女子医科大学第二病院 救急医療科
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福田 優
福井医科大学 第一病理
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福田 優
福井大学医学部病理学
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今村 好章
福井大学医学部附属病院病理
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今村 好章
福井医科大学第1病理
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今村 好章
福井大学附属病院病理部
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今村 好章
福井医大 第一病理学
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三好 憲雄
福井大学医学部病因病態医学腫瘍病理学領域
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三好 憲雄
福井大学・医学部・病因病態医学講座・腫瘍病理学領域
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三好 憲雄
福井医科大学・第一病理学
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福田 優
福井医科大学 救急部
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福田 優
福井医科大学 第1病理
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須賀 弘泰
東京女子医科大学東医療センター救急医療科
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須賀 弘泰
福井医科大学 救急部
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中川 隆雄
東京女子医科大学東医療センター救急医療科
-
中川 隆雄
東京女子医科大学 救急医学
-
三好 憲雄
福井医科大学 救急部
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今村 好彰
福井医科大学第一病理
-
福田 優
福井医科大学第1病理
-
今村 好章
福井医科大学第一病理学教室
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三好 憲雄
福井医科大学
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中川 隆雄
東京女子医科大学東医療センター救命救急センター
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