ヘリコプタロータの翼端噴射に関する数値解析:第1部 固定ブレードの翼端渦
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概要
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ブレード/ 渦干渉( Blade-Vortex Interaction: BVI) 騒音は、先行するメイン・ロータのブレードが吐き出した翼端渦が後続ブレードの翼端付近を通過する時に起こる弱い干渉、あるいは先行ブレードの翼端渦を後続ブレードが切る時に起こる強い干渉によって、ブレードの空力荷重が急激に変動することから発生する。この騒音は、特に前進方向の下方に指向性を持ち、主にヘリコプタが着陸する際に発生するため、付近の住民に与える影響が大きく、都市部におけるヘリポート設置の妨げとなっている。BV I 騒音の低減法としては、翼型や翼端形状を工夫する受動的なものから、高調波制御、アクティブ・フラップ、翼端噴射などの能動的なものまで、様々な方法が提案されている。航空宇宙技術研究所( NAL) と韓国の浦項工科大学校( POSTECH) は、能動的なB V I 騒音低減法の中で、特に翼端噴射に着目して、その低減効果をC F D で解析することを目的に、共同研究を行った。この翼端噴射とは、ヘリコプタ・ブレードの翼端から半径方向外向きにジェットを噴き出すことで、翼端渦の位置や構造を変化( 渦の循環を弱めたりコア半径を大きくする)させ、BVI騒音を低減しようとする技術である。本研究では、まず、単一格子を用いて固定ブレードの翼端噴射が翼端渦の挙動に及ぼす影響をEuler/Navier-Stokes コードで解析した。続いて、移動重合格子法を用いた3 次元非定常Euler コードと Ffowcs Wi lliams and Hawkings (FW-H) の式に基づく空力音響コードを組み合わせた計算法によって、回転場での翼端噴射の騒音低減効果を解析した。本報告は、前者の固定ブレードの結果について述べるものである。ここで用いたコードの検証は、実験値との比較を通して行った。解析の具体的な目的は、翼端噴射速度、噴射方向、噴射口面積をパラメトリックに変化させたとき、それが翼端渦の挙動(翼端渦の大きさ、中心位置、循環、最大周速度など)に及ぼす影響を把握することである。結果として、翼端噴射は渦のコア半径を大きくして翼端渦の拡散を促すとともに、その位置を翼端面内から外側に移動させることが分かった。これは、翼端噴射を回転ブレードに適用したとき、BVI 騒音を低減する可能性を示唆するものである。
- 宇宙航空研究開発機構の論文
著者
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青山 剛史
宇宙航空研究開発機構研究開発本部数値解析グループ
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齊藤 茂
宇宙航空研究開発機構 航空プログラムグループ 運航・安全技術チーム
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青山 剛史
宇宙航空研究開発機構 研究開発本部 数値解析グループ
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梁 忠模
宇宙航空研究開発機構 研究開発本部 数値解析グループ
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BAEK Jehyun
Pohang University of Science and Technology (POSTECH)
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BAEK Jehyun
浦項工科大学校
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齊藤 茂
宇宙航空研究開発機構航空プログラムグループ 運航・安全技術チーム
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青山 剛史
航空宇宙技術研 流体科研セ
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青山 剛史
宇宙航空研究開発機構
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