音響振動解析のための数値計算法に関する研究
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概要
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打上げ時の宇宙機には、ロケットの間のインターフェイスを通じて機械振動が加わる。さらに、広い周波数成分をもつ音圧が宇宙機表面に加わることにより振動する。太陽電池パドルやアンテナなど軽量で大きな面積をもつ構造や、比較的高い固有振動数をもつコンポーネントは、音響荷重に影響されやすい。この音響振動の数値予測手法に着目すると、既存の解析手法としては、低周波側では有限要素法(FEM)等の決定論的手法、高周波側では統計的エネルギー法(SEA)等の確率統計的手法が適用されている。しかし、一般に両手法では信頼性の高い解析のできない中間周波数領域が存在することが知れている。そこで、本論文では、まず、低周波領域における解析に留まっているFEM の性質について議論するため、FEM の基本的なモデング手法や解析手法等について整理し、単純なモデルのランダム応答解析を実施した。さらに、補強材を含む単純な衛星主構造モデルを用いて、FEM による衛星の音響振動解析を実施した。これらの解析結果から、数値分散誤差の影響や音響と構造の連成解析の重要性について明らかにした。次に、このような要素ベース手法の欠点を克服するために新たに提案された波動ベース法(WBM)について議論した。まず、本研究において開発した2 次元WBM 解析コードと商用FEM ソフトウェアを用いて、いくつかの単純な音響構造連成解析と非連成音響解析を行い、WBM コードの検証を行うとともに基本的なWBM の性質を把握した。そして、この結果を踏まえて、フェアリング内の衛星の音響振動連成解析を実施した。以上の結果から、WBM の音響振動連成解析における高精度な決定論的性質が確かめられた。つまり、支配方程式を厳密に満たす波動関数の性質により数値分散誤差を伴わないことから、既存の解析手法で精度の高い解析ができない中間周波数領域を含む広い周波数領域における解析が可能であることが分かった。さらに、空間離散化(メッシュ)を必要としないため、モデル化が非常に容易で計算負荷の小さい実用的な手法であることが分かった。
著者
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高橋 孝
宇宙航空研究開発機構研究開発本部数値解析グループ
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村上 桂一
宇宙航空研究開発機構研究開発本部数値解析グループ
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青山 剛史
宇宙航空研究開発機構研究開発本部数値解析グループ
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相曽 秀昭
宇宙航空研究開発機構総合技術研究本部計算科学研究グループ
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青山 剛史
宇宙航空研究開発機構 研究開発本部 数値解析グループ
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高橋 孝
宇宙航空研究開発機構
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相曽 秀昭
宇宙航空研究開発機構
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村上 桂一
宇宙航空研究開発機構
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青山 剛史
宇宙航空研究開発機構
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