下半身頑痛症に対するコルドトミーの適応と成績 : Microsurgeryの導入を中心として(神経疾患と治療,<特集>脳と神経の研究VII)

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頑痛症,特に悪性腫瘍による疼痛に対しては,種々の除痛手術があるが,特に下半身の疼痛に対しては,古来コルドトミーが愛用されてきた。しかし,その除痛効果は未だ完壁とはいえず,また術後運動麻痺や排尿障害をきたす危険性も孕んでいる。従ってその手術には非常なる正確さが要求され,今までは,長年の経験によってのみ手術成績を向上させてきた感がある。著者らは近年発達してきたMicrosurgeryの技術を導入して,正確な脊髄切断を容易にすることによって,その手術成績を向上させるべく努力してきた。昭和44年5月より14例のコルドトミーを,3〜6倍の拡大鏡下に施行した所,12例に完全な除痛効果を得ることができた。1例は一時的除痛効果を得たのみで,他の1例は全く効果が見られなかった。この失敗例は,良性疾患による慢性の疼痛で,コルドトミーの適応外であったと考えられる。悪性腫瘍由来の頑痛症13例に限れば,成功率92%となる。術後の同側下肢の運動障害は全く見られなかった反面,両側コルドトミー4例中2例(50%)に排尿障害が見られた。これは,排尿運動神経路が脊髄赤道面にあるとする説と,われわれの1/4完全切断を狙う術式とを合せ考えれば,むしろ当然の結果であろう。肉眼的脊髄切断では,切断面が小さすぎれば,排尿や運動障害を来たない代わりに,除痛効果が劣り,大きすぎれば逆の結果となる。ここに,コルドトミーの難しさがあり,Microsurgeryの絶対必要なる理由がある。今後は,両側コルドトミーに際して,いかに排尿障害をなくしつつ完壁な除痛効果の得られるようにするかの術式の研究が残されていると信ずる。
千葉大学の論文

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