条件付自己回帰モデルによる空間自己相関を考慮した生物の分布データ解析(<特集2>始めよう!ベイズ推定によるデータ解析)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
野外の生物の分布パターンは生育に適した環境の分布や限られた移動分散能力などの影響をうけるため、空間的に集中した分布を持つことが多い。データ解析においてはこのような近隣地点間の類似性「空間自己相関」を既知の環境要因だけでは説明できないことが多く、近い地点同士ほど残差が類似する傾向がしばしば発生する。この近隣同士での残差の非独立性を考慮しないと、第一種の過誤や変数の効果の大きさを誤って推定する原因になることが知られているが、これまでの空間自己相関への対処法は不十分なものが多く見られた。近年、ベイズ推定に基づく空間統計学的手法とコンピュータの能力の向上によって、より現実的な仮定に基づいて空間自己相関を扱うモデルが比較的簡単に利用できるようになっている。中でも、条件付き自己回帰モデルの一種であるIntrinsic CARモデルはフリーソフトWinBUGSで計算可能であり、生物の空間分布データの解析に適した特性を備えている。Intrinsic CARモデルは「空間的ランダム効果」を導入することで隣接した地点間の空間的な非独立性を表現することが可能であると共に、推定された空間的ランダム効果のパターンからは対象種の分布パターンに影響を与える未知の要因について推察することができる。空間ランダム効果は隣接した地点間で類似するよう、事前分布によって定義され、類似の度合いは超パラメータによって制御されている。本稿では空間自己相関が生じるメカニズムとその問題点を明らかにした上で、Intrinsic CARモデルがどのように空間自己相関を表現しているのかを解説する。さらに、実例として小笠原諸島における外来木本種アカギと渡良瀬遊水地における絶滅危惧種トネハナヤスリの分布データへの適用例を紹介し、空間構造を考慮しない従来のモデルとの比較からIntrinsic CARモデルの活用の可能性について議論する。
- 2009-07-31
著者
-
石濱 史子
国立環境研究所生物圏環境研究領域
-
深澤 圭太
横浜国立大学環境情報学府
-
小熊 宏之
国立環境研究所
-
武田 知己
国立環境研究所
-
田中 信行
森林総合研究所
-
竹中 明夫
国立環境研究所
-
石濱 史子
国立環境研究所
-
深澤 圭太
横浜国立大学環境情報学府:財団法人自然環境研究センター
-
田中 信行
森林総合研
-
Fukasawa Keita
Graduate School Of Environment And Information Sciences Yokohama National University
関連論文
- モニタリングサイト1000森林・草原調査コアサイト・準コアサイトの毎木調査データの概要(学術情報)
- 日本産被子植物の絶滅リスクと生態的特性の関係 : 系統関係を考慮した地域間・科間比較(生物の空間分布・動態と生態的特性との関係:マクロ生態学からの視点)
- イヌケホシダの潜在分布域と気候変化シナリオに基づく分布変化の予測(第39回大会)
- 日本における常緑カシ類2種の個体および優占林の分布を規定する気候条件
- 条件付自己回帰モデルによる空間自己相関を考慮した生物の分布データ解析(始めよう!ベイズ推定によるデータ解析)
- ブナ林分布予測モデルの精度比較
- 日本におけるチマキザサ節の潜在分布域の予測と気候変化の影響評価
- 気候要因と地質要因を用いたヤツガタケトウヒとヒメバラモミの現在の分布域の推定
- 小笠原におけるアカギの根絶と在来林の再生 (小笠原における外来種対策とその生態系影響)
- カラマツ葉の生化学物質含有量推定に関する研究 : LIBERTYモデルに基づく検討
- リモートセンシングデータを用いた特定森林樹冠率の推定 : 釧路湿原におけるハンノキの推定
- マルハナバチ一斉調査北海道と栃木県でのセイヨウオオマルハナバチの確認
- 定点撮影カメラによる森林のフェノロジー判定と植生指標・葉面積指数の季節変化
- 森林モニタリング用ハイパースペクトラルカメラシステムの開発
- 可搬型Scanning Lidarデータを用いたカラマツ林の樹林マッピングと胸高直径及びバイオマスの推定
- マルハナバチ一斉調査(第五報)
- 多摩川のカワラノギク保全のための緊急アピール(緊急アピール)
- 衛生データによるメッシュ単位の気候値(旬別平年値)推定に関する基礎的研究
- Lシステムを用いたヒマワリの形状モデリング
- 衛星データによる中国遼寧省の気温分布と気温区分の推定
- 衛星データによる排水不良地、地下水位の推定に関する基礎研究
- レーザスキャナを用いたカラマツ群落の三次元構造の測定
- カラマツ針葉の光合成活性と分光反射指標の関係
- 温暖化にともなうブナ林の適域の変化予測と影響評価 (地球温暖化--日本における影響の総合評価)
- 本州東部におけるチシマザサの潜在分布域の予測と気候変化の影響評価
- 世界遺産白神山地ブナ林の気候温暖化に伴う分布適域の変化予測
- 天然林の分布を規定する気候要因と温暖化の影響予測:とくにブナ林について (温暖化影響特集) -- (生態系への影響)
- ブナ林とミズナラ林の分布域の気候条件による分類
- 温暖化の日本産針葉樹10種の潜在生育域への影響予測 (地球温暖化--日本における影響の総合評価)
- 環境気候学, 吉野正敏・福岡義隆編, 東京大学出版会, 2003年9月24日発行, 392頁, 定価4,600円(税別), ISBN4130627104
- 小笠原における森林生態系保全の現状と提言
- 日本の樹木種子(広葉樹編), 勝田柾・森徳典・横山敏孝著, 林木育種協会, 410ページ, 1998年, 9,500円(送料込・税別)
- C153 GOSAT TANSO-FTS-SWIR BBMによる模擬観測実験 : 短波長赤外域の地表面散乱光観測による二酸化炭素気柱量の導出(大気リモートセンシングデータ解析技術における工夫,専門分科会)
- P412 短波長赤外フーリエ変換分光器(GOSAT-BBM)による二酸化炭素スペクトルの高地観測実験 その2
- B113 航空機搭載短波長赤外フーリエ変換分光計(GOSAT-TSUKUBAモデル)による観測結果について(微量気体・GOSAT)
- P403 筑波山近辺の気象不連続変化時における複数測器の相関と考察
- GOSAT搭載TANSOによる温室効果ガス観測(宇宙応用シンポジウム)
- P308 短波長赤外フーリエ変換分光器(GOSAT-BBM)による二酸化炭素スペクトルの高所観測実験
- GOSATによる衛星からの温室効果ガス観測
- 始めよう!ベイズ推定によるデータ解析
- P229 定点連続撮影カメラを利用した積雪深推定方法の検討
- 日本産被子植物の絶滅リスクと生態的特性の関係 : 系統関係を考慮した地域間・科間比較
- 全天分光日射計を用いた各種植生指標とCO2フラックス・葉面積指数の季節変化 : 苫小牧フラックスリサーチサイトタワーデータでの検証
- 多摩川におけるカワラノギクの保全生物学的研究
- デジタル航空写真を用いた渡良瀬遊水地における植生高の推定
- 植生データのデータベース化とその有効利用 第二部パネルディスカッション
- 野外放射計校正のための放射輝度実用標準
- 京都議定書で評価される吸収源活動のモニタリングと認証に関わるリモートセンシング計測手法の役割
- 京都フォーレストの計測におけるリモートセンシングデータの高度利用 -吸収源活動の定義オプションと利用可能センサの評価-
- 温室効果ガス削減問題における今後のリモートセンシングの役割
- 二次元イメージング・スペクトロメータによる植生反射率の計測
- リモートセンシングデータの可視化による災害監視
- TRMM可視赤外観測装置(VIRS)とその利用
- 陰ひなたのある枝の成長と樹冠の形成(森林系研究の展望 : シュートから地理分布動態まで)
- リモートセンシングデータを利用した林分構造の計測
- 京都議定書に関わる吸収源計測システムの開発 : 航空機Lidarによるカラマツ林の樹冠計測と材積・炭素重量計測精度の検証
- 吸収源プロジェクト実施地域を対象とした衛星データによるARD活動のモニタリング
- 吸収源を用いた地球温暖化対策とリモートセンシングの役割
- 「京都議定書と炭素吸収源」特集号編集にあたって
- 森林樹冠率の推定におけるミクセル分類手法の有効性に関する研究
- 時系列センサフュージョン画像を用いた最新分類手法精度比較
- リモートセンシングデータを用いた森林樹冠率の推定 (京都議定書対応のためのリモートセンシング技術の確立)
- ハイパースペクトラルビデオシステムの開発
- Rで改善する生態学のデータ解析(学術情報)
- 木々の知識を集めてみれば : 個体ベースモデルによる森林動態の再現と予測(環境影響評価に関する保全生態学からの提案:ツールとしての数理モデルをアセスにどう取り込むか)
- 光獲得構造としての植物のマクロなかたち
- III-2 植物のマクロな形 : 計算機による再構成と受光機能の評価(III.葉の形態形成・機能からみた植物の生産能)
- 植物個体の葉群配置と個葉の光環境
- 植生反射係数Hot Spot観測のためのプロトタイプ魚眼カメラ
- サブピクセルカテゴリの検出方法の検討
- 小笠原における森林生態系保全の現状と提言(小笠原の森林の生物多様性保全)
- 植生データベースを用いた地球温暖化の影響予測研究
- 甲信越地域におけるブナ葉面積の地理的変異
- Predicting future invasion of an invasive alien tree in a Japanese oceanic island by process-based statistical models using recent distribution maps
- 航空機搭載用マルチスペクトラルスキャナーの性能評価
- 日本の保全生物学が必要とするマクロスケールからの視点(学術情報)
- 京都議定書に関わる吸収源計測システムの開発 : 地上レーザスキャナによる点群モデルを用いた計測手法の検討
- 植物の分布を規定する気候要因の特定および気候変化に伴う生育地の移動予測 (2009年度春季大会シンポジウム 「地球温暖化に関する科学的根拠の解明と脆弱性評価のさらなる連携に向けて」の報告)
- 可搬型3次元レーザスキャナデータと放射伝達モデルを用いた林床光環境の推定手法の開発
- 広葉樹の天然更新完了基準に関する一考察
- 2. 植物の分布を規定する気候要因の特定および気候変化に伴う生育地の移動予測(2009年度春季大会シンポジウム「地球温暖化に関する科学的根拠の解明と脆弱性評価のさらなる連携に向けて」の報告)
- 始めよう!ベイズ推定によるデータ解析
- 植物の分布を規定する気候要因の特定および気候変化に伴う生育地の移動予測
- 航空機LIDARを用いた樹高と森林蓄積量の評価(会員研究発表論文)
- カラマツ林NPP算出値の検証 : 毎木調査・航空機レーザ計測・微気象学的手法(会員研究発表論文)
- リモートセンシングによるカラマツ針葉の光利用効率の推定 : 衛星観測時刻と天候の影響(会員研究発表論文)
- PENシステム導入によるカラマツ植林地の連続分光計測(会員研究発表論文)
- 航空計測を用いた2004年台風18号による森林被害の把握(会員研究発表論文)