行動科学的手法を用いた運動習慣獲得プログラム : 運動習慣のない健常人に対する介入
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概要
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本研究は,運動アドヒレンス強化に向け,行動科学的技法を川いた介入を実施し,運動習慣の形成と白己効力感の増強についての有効性を検討することを目的として行った。対象者は,福岡市健康づくりセンターで行った健康運動教室(以下教室と略)に参加した48.3±11.2(標準偏差)歳の558名(男性61名,女性497名)であり,すべて参加前に運動習慣がなく,健常であった。対照群は,健康度診断だけを行った51.0±15.1歳の健常女性51名である。教室は,全12回(3ヶ月間),週1回,1回約2時間行い,教室参加前と第11回目に健康度診断を行った。教室では,目標設定,運動継続を阻害する因子の対処法,グループワーク,セルフモニタリングなどの行動科学的技法を取り入れ,10歩数を指標とする日常生活での身体活動量の増加と,ウォーキングを主体とする中等度強度での有酸素運動の習慣化を日指した。主な結果は以下の通りである。1.教室参加回数は8.8±3.1回であり,6回以上の参加者は82.4%を占めた。介入期間中に半分以上の日数で記録票に記入した者は77.8%であった。2.介入期間中の1日歩数は9,744±3,069歩/日(n=336),有酸素運動の実施量は227±132分/週(n=346)であり,いずれも介人前に比べ有意に増加した。3.記録票の記録率と介人中の1日平均歩数または有酸素運動の実施量とのにはそれぞれ有意な相関関係が認められた。4.介人群における自己効力感の介人前後の変化量は,運動,食生活,健康管理,および総合点の全ての項目で対照群に比し,有意な高値(すべてp<0.001)を示した。5.介人前の自己効力感の運動得点と介人中の111平均歩数または有酸素運動の実施量との問には,それぞれ有意な相関関係が認められた。6.介人後の体脂肪率,安静時血圧(女性のみ),総コレステロール,最大酸素摂取量は,いずれも有意に改善した。以上のことから,本介入プログラムは,日常生活での身体活動量に加え,有酸素運動の実施量も増加したことから,運動習慣の形成に効果的であり,生活習慣病の危険因子の軽減に役立つものであることが示唆された。さらに,本介入によって運動のみならず,生活習慣全般に関わる自己効力感が増加したことから,ライフスダイルに対するセルフコントロールの向上にも効果的であることが示唆された。参加時の白己効力感は,介人による運動行動を予測できる可能性かあり,今後それを指標にして個人ごとに指導を変えるなど,介人方法を洗練する必要があると考えられた。
著者
-
津田 彰
久留米大学文学部
-
肘井 千賀
福岡女子大学家政学部
-
大島 晶子
福岡市健康づくり財団
-
柳川 真美
福岡市健康づくりセンター
-
神宮 純江
福岡市健康づくりセンター
-
神宮 純江
福岡市健康づくり財団
-
大藤 直子
福岡市健康づくりセンター
-
肘井 千賀
福岡市健康づくりセンター
-
津田 彰
久留米大学
-
小笠原 正志
久留米大学大学院心理学研究科
-
肘井 千賀
福岡市健康づくり財団
-
肘井 千賀
財団法人福岡市健康づくり財団
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