根尖病巣治癒過程における骨基質タンパク質の変化

概要

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通常,根尖性歯周炎の治癒は生理学的根尖孔までの根管の無菌化によって達成される.しかし,通法に従って治療を行うが治癒にいたらない難治性の根尖性歯周炎に対しては外科的歯内療法処置が選択されることもある.われわれは過去の研究において,難治性の根尖病巣に対して,5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて根管経由で根尖病巣を洗浄することで,根尖病巣の壊死組織や細菌は溶解・除去され早期の治癒をもたらすことを明らかにした.しかし,次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いた病巣洗浄の研究において,骨基質タンパク質に着目しその消長を生化学的に分析したものはない.そこで,本研究ではラットに根尖病巣を作製し,次亜塩素酸ナトリウム溶液にて病巣内を洗浄した後,病巣周囲の骨基質タンパク質を摘出し,抽出性状に従ってコラーゲン性タンパク質と非コラーゲン性タンパク質をEDTA可溶性画分,グアニジン可溶性画分に分画し,それぞれの量的,質的な変化の観察を行った.本実験により,コラーゲン性タンパク質の量的変化は,短期間のうちに増加することが明らかとなった.また電気泳動的手法によるコラーゲン分子種の検索では,I,III,V型のコラーゲンが検出されたが,正常組織に比較しIII型コラーゲンの比率は著しく低下した.非コラーゲン性タンパク質においては,電気泳動的検索では,EDTA画分,グアニジン画分ともに特定の分子量のピークの構成比率に差が認められた.レクチンブロットによる糖タンパク質の検索においては,EDTA画分では50kD付近のタンパク質の構成比率に差が認められ,グアニジン画分ではほとんど変化がみられなかった.以上により,次亜塩素酸ナトリウム溶液にて根尖病巣を洗浄することによって,治癒過程におけるコラーゲンタンパク質の量,EDTA画分,すなわちミネラル結合性タンパク質の量および電気泳動的挙動に変化のあることが明らかになった.今後,今回の実験で特に大きな変化のみられた分子量のタンパク質を分析することは,根尖病巣の治癒過程を解明する一助となると考える.
特定非営利活動法人日本歯科保存学会の論文
2007-10-31

根尖病巣治癒過程における骨基質タンパク質の変化

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