ネパールにおける高度帯別水質特性およびテライ低地の地下水ヒ素汚染
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概要
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ネパールの地形は、南部の標高150m以下のテライ、150〜300mのシワリク、300〜2,500mのヒル/ミドルマウンテン、2,500m以上のハイマウンテン等の高度帯に大別され、地質構造にも大きな特徴が見られる。そこで2007年8月から9月に、標高3,000m以下のこれらの地帯を代表する4つの地域(1)を選定し、飲料水の水質調査を実施し、その概要を把握した。また、ヒ素汚染が報告されるテライ(Parasi)においては、地下水のヒ素汚染の実態について調査した。 (1)飲料水水質調査地点 ハイマウンテン:Lukla(2,840m),Jomsom(2,710) ヒル/ミドルマウンテン:Kathmandu(1,300m),Pokhara(820m),Manakamana(1,300m) シワリク:Bharatpur(190m)テライ:Parasi(110m),Lumbini(100m)(2)ヒ素汚染調査地域 テライ:Parasi(110m)その結果得られた知見は,次の通りである。(1)ハイマウンテンのLuklaではpH6台後半の値を示すが、同じハイマウンテンのJomsomではpH8を示す。これは、地層の違いによるものと考えられる。(2)KathmanduだけがNH_4+を高濃度で検出した。これは、河川の人為的汚濁が原因であると考えられる。(3)タライの沖積地帯に位置するParasi、Lunbiniでは、他地域と比較して、Mg2^+、Ca^<2+>が高濃度に検出される。(4)Jomsomは、Pokharaの上流に位置し、上流には海成堆積層が存在する。水源が共通しているため、ともにCa^<2+>が80%近くを占める。(5)同じ高度帯に隣接するManakamanaとKathmanduは、地質構造が類似しているため、Na^+(30%超)、Ca^<2+>(40%前後)の比率が類似する。(6)ParasiとBharatpurは、各種成分濃度に関しては,後者が前者の約1/4と大きな違いはあるが、各種成分の濃度比は非常に類似している。(7)Parasi、Lunbiniの全硬度は、日本の水道水基準値(300mg/L)に近い値を示す。(8)ParasiのAsとBは、高い相関(r=O.97)を示す。(9)Parasiにおいては,ヒ素の高濃度値が局所的に分布する。(10)高濃度ヒ素の局所的分布の原因としては、地下の帯水層の深さ・地質(粘土・砂・礫)構造などが複雑に入り組んでいるためと推測される。タライ沖積低地に位置するParasiでは地下水のヒ素汚染が不規則に分布することを確認した。その分析には、帯水層の地質状況の調査が重要である。特に造山運動による摺曲や衝上断層による間接的な影響や地下に存在する蛇行跡などが帯水層のメカニズムを複雑化している。さらに、ヒ素の地下水への溶出と帯水層中の移動に関して、ヒ素の広域汚染源、ヒ素含有岩石・砕屑物、海成堆積物、河川と風化の影響、地下水中の化学物質(特に鉄化合物や硫化物など)、pH、酸化還元電位なども大きく関与すると考えられる。
著者
-
駒井 武
産業技術総合研究所(産総研)地圈資源環境
-
中村 圭三
敬愛大学環境情報研究所
-
中村 圭三
敬愛大学国際学部
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駒井 武
産業技術総合研究所
-
駒井 武
産業技術総合研究所研究部門
-
大岡 健三
産業環境管理協会
-
駒井 武
産業技術総合研 地圏資源環境研究部門
-
駒井 武
産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 地圏環境評価グループ
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