汚染物質間の相互作用に起因するリスクの責任分担とリスクの明示・暗示
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概要
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複数の汚染物質間の相互作用は,r^<1/μ>=Σr^<1/μ>_j=Σ(x_j/A_j)^<1/μ>で評価することができる(Shoji, 2006).ここで, x_jとA_jはそれぞれ汚染物質jの濃度と基準値,r_j=x_j/A_jとrはそれぞれ過濃度比と総過濃度比,μは相互作用指数である.相互作用はμ→0のときなし,0<μ<1のとき負,μ=1のとき相補的,μ>1のとき正である.発生源が異なる汚染物質間の相互作用で起きる環境影響に対する責任は,この過濃度比の割合に応じて分担することが考えられる.しかし,この分担方式に従うと,(1)相互作用がない場合,ある排出者の過濃度比が環境基準を越えると,他の排出者も責任を負わなければならない,(2)ある発生源がその過濃度比を上げたために総過濃度比が環境基準を越えると,他の発生源も責任を分担しなければならない,(3)正の相互作用がある物質の組合せの場合,各発生源では環境基準以下の被汚染物質が,混合されただけで環境基準を越えることがある,(4)負の相互作用がある物質の組合せの場合,各発生源では環境基準以上の被汚染物質が,混合されることにより環境基準以下になることがあるなどの不都合が生じる.このうち,(4)の不都合を生じさせる負の相互作用は実際には見掛け上の現象で,相補的相互作用の関係にある複数の影響点(汚染物質による被害を受ける器官や温室効果ガスによる温暖化など)を重ね合わせることにより説明することができる.例えば,影響点2に対する汚染物質1の基準値が影響点1に対する値の5倍で,影響点1に対する汚染物質2の基準値が影響点2に対する値の5倍の場合,影響点1の安全/危険境界と影響点2の安全/危険境界は汚染物質1および2それぞれの過濃度比が5/6の点で交わり,全体としての安全/危険境界は原点に対して凹の形をとる.また,影響点3に対する汚染物質1の基準値が影響点1に対する値の1.5倍で,影響点3に対する汚染物質2の基準値も影響点2に対する値の1.5倍の場合,影響点3の安全/危険境界は先の影響点1の安全/危険境界と影響点2の安全/危険境界の交点より原点側を通る.このことは,相互作用が考慮されていないと,影響点3の安全/危険境界が影響点1と2を合わせた安全領域を通っていても,見落とされる可能性があることを意味する.また,影響点1と2を合わせた安全領域が影響点3の安全領域に完全に含まれていても,影響点3の危険領域で影響点の数が3の場合の総過濃度比は影響点の数が2の場合より大きくなるので,この場合も影響点3を無視すべきではない.
- 2006-12-25
著者
-
駒井 武
産業技術総合研究所研究部門
-
駒井 武
独立行政法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門
-
正路 徹也
東京大学新領域創成科学研究科 環境学専攻
-
正路 徹也
東大
-
駒井 武
産業技術総合研 地圏資源環境研究部門
-
駒井 武
独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 地圏環境評価グループ
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