BepiColombo 水星探査計画に向けた遠紫外光検出器の位置分解能向上に関する研究
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概要
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マリナー10号による紫外光観測や地上観測により,水星には6種類(Ca,Na,K,H,He,O)の大気成分があることが判明している.これらの大気成分のうちH,Heは太陽風を起源とし,その他は,太陽光による光脱離や,熱脱離,イオンスパッタリングによって地表から放出されたものと考えられている.さらに地質・地学的な研究や,地球,月の大気からの類推からH_2,OH,Mg,Ar,Neや,He^+,O^+などの大気成分の存在も示唆されている.これらの大気成分を検出し,さらに新たな元素を発見するために,2013年打ち上げ予定のBepiColombo水星探査計画において我々は紫外線分光観測装置(PHEBUS)を水星表層探査衛星(MPO)に搭載する.現在我々はPHEBUSの遠紫外光検出部(FUV)の開発を進めている.FUVの開発において最大の課題となるのが位置分解能の向上である.遠紫外光領域においてPHEBUSに必要な波長分解能1.5nmを達成するためにはFUVが80μmの高い位置分解能をもたなければならない.FUVは光電面,電子増倍部(マイクロチャンネルプレート:MCP),2次元位置検出器(レジスティブアノード)から構成される.MCPによって10^6〜10^7倍に増幅した電子はレジスティブアノード上の四隅の電極に分割され,それらの電荷量の比から位置を算出できる.レジスティブアノードに入射する電子数が多いほど位置精度は高くなるため,FUVの位置分解能は一つの光子からMCPによって増幅される電子数(利得)に依存する.すなわち高い位置分解能を得るにはMCPの利得が高くかつ一定に近いことが理想的である.しかし,高利得を得るために一般的に用いられるMCPを2枚ないし3枚重ねる方法ではFUVに必要な位置分解能80μmを達成するには不十分である.そこで今回我々は5枚重ねのMCPを用いてFUVの試作機を製作し,その性能を評価した.MCPの各部位への印加電圧を変化させ,それぞれの場合の利得および位置分解能を調べた.その結果,5段MCPを用いればおよそ2×10^7の高い利得を達成でき,PHEBUSに必要な位置分解能を十分満たしていることを確認した.さらに,MCPの間に逆向き電圧を印加することで利得のばらつきを約1/5に抑えられ,位置分解能も1.2倍に向上させられることがわかった.今後は本試作機の試験結果に基づきFUVの仕様を決定し,2013年の打ち上げに向けて開発を進めていく.
- 宇宙航空研究開発機構の論文
著者
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山崎 敦
宇宙航空研究開発機構
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吉川 一郎
東京大学大学院理学系研究科地球惑星物理学専攻
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山崎 敦
JAXA ISAS
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山崎 敦
通総研
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山崎 敦
The Institute Of Space And Astronautical Science (isas) Jaxa
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豊田 丈典
The University Of Tokyo
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村上 豪
The University of Tokyo
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江沢 福紘
The University of Tokyo
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吉岡 和夫
The University of Tokyo
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吉川 一朗
The University of Tokyo
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山崎 敦
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所
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吉川 一朗
宇宙科研
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