S-520-19 号機搭載 Helium Emission Monitor によるプラズマ圏ヘリウムイオンの光学観測に関する研究
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概要
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本論文では観測ロケットS-520-19号機に搭載したHelium Emission Monitorによるプラズマ圏ヘリウムイオンの光学的観測について報告する.HEM は多層膜反射鏡と金属薄膜フィルタ, マイクロチャンネルプレートという光学部品から構成され, ヘリウムイオンが散乱する極端紫外光に高い検出感度(∿100cps/Rayleigh, 空間分解能2.5゜)を持ち, 他の共鳴光の混入が非常に少ない直入射型望遠鏡である.観測ロケットS-520-19号機は鹿児島宇宙空間観測所から1995年1月29日午前1時に打ち上げられ, 高度220kmから観測を開始した.観測の前半は他の望遠鏡が銀河北極方向にある高温白色矮星Hz 43 の観測を行うため, HEM の視線方向は他の望遠鏡と同様に固定されていた.その後下降時の高度210-170kmの間にロケットの機軸を傾ける姿勢変更によってHEM の視線方向を移動させ, プラズマ圏ヘリウムイオンの分布を光学的に観測した.取得されたデータの解析には拡散平衡モデルを使用し, プラズマ圏ヘリウムイオンの大局的な分布の導出を行った.またロケット高度から行う光学観測には中性大気による吸収が大きく影響するため, 衛星による粒子の質量分析やISレーダによる観測データから導かれた経験モデルを用いてその効果を定量化した.その結果, 観測された散乱光の光量の変化はモデルから見積もられた光量の変化と非常によく一致していることが解り, このことから逆に電離圏上部におけるヘリウムイオンの密度とプラズマポーズ付近の温度をそれぞれ3700/cm^3および8000Kと算出することができた.近年の衛星による直接観測データと比較するとこれらの値はプラズマ圏・電離圏の典型的な値であり, さらに観測時前後の地磁気活動度が非常に低かったことも考慮に入れると今回は磁気圏全体の活動度が低い状態を観測したと考えられる.また, 観測視野を朝側地表付近に向けた時には, 昼側電離圏から He I (584A) の多重散乱光が観測された.
- 宇宙航空研究開発機構の論文
著者
-
Misaki Kazutami
MPE
-
中村 正人
宇宙航空研究開発機構
-
吉川 一郎
東京大学大学院理学系研究科地球惑星物理学専攻
-
山下 広順
大阪大学理学部
-
中村 正人
東京大学大学院理学系研究科
-
平原 聖文
立教大学
-
平原 聖文
東京大学大学院理学系研究科地球惑星物理学専攻
-
滝沢 慶之
東京大学大学院理学系研究科地球惑星物理学専攻
-
山下 廣順
名古屋大学理学部物理学科
-
国枝 秀世
名古屋大学理学部物理学科
-
山崎 孝
名古屋大学理学部物理学科
-
見崎 一民
名古屋大学理学部物理学科
-
鶴田 浩一郎
宇宙科学研究所
-
見崎 一民
浜松ホトニクス
-
鶴田 浩一郎
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部
-
中村 正人
Isas:jaxa
-
吉川 一朗
宇宙科研
-
Kodaira Hironobu
Department Of Physics Kanazawa University
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