酸化酵素阻害剤などのケイヌビエ種子の休眠に対する覚醒効果
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概要
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飼料作物としての利用が着目されつつあるケイヌビエ(Echinochloa crusgalli var. caudata)の種子休眠について,scarification処理,dipping処理,および酸化酵素阻害剤を中心とした化学物質処理などの休眠覚醒効果の面から検討した。結果は次の通りである。1)ケイヌビエ種子の休眠覚醒の進行は,採種場所あるいは時期を異にしたseed lotによって大きな差異が認められた。2)scarif.処理は,休眠程度の深い種子に対して,30〜50%の発芽誘起をしたが,休眠の覚醒が進行した場合でも,あまり発芽率の増大はみられなかった。3)dip.処理は,いかなる休眠段階の種子に対しても効果が認められなかった。4)多くの酸化酵素の阻害をするKCN,NaN_3に顕著な効果が見られ,銅および鉄など多くの金属イオンと反応するcupferronおよびoxineも有効であった。5)thiourea,salicylaldoxime,p-nitrophenol,phenylthioureaなど,銅酵素であるpolyphenol oxidaseの阻害剤が休眠覚醒効果を有した。6)銅と反応して沈殿生成物をつくるα-benzoinoxime,ο-aminobenzoic acid,2-mercaptobenzothiazole,quinaldinic acidにも,休眠覚醒を進行させる効果が認められた。しかし,銅と反応しないm-およびp-aminobenzoic acidはこの効果がなかった。7)ο-cresol,guaiacol,p-quinoneなどのphenol類およびその酸化生成物にも顕著な効果がみられた外,carbonyl試薬であるhydroxylamine,uncouplerであるDNPも休眠を覚醒した。8)上記の化学物質の効果は,種子の休眠程度によって異なり,ある程度休眠覚醒が進行した種子に対して有効であった。また処理濃度および処理時間によっても左右された。9)風乾貯蔵条件下では,30℃前後の温度によって休眠の覚醒はすみやかに進行したが,それ以上でも,以下でも休眠覚醒の進行は遅延した。とくに10℃以下の低温では休眠は顕著に維持された。しかし,湿潤条件下では低温は,休眠覚醒に有効に作用した。
- 日本草地学会の論文
- 1974-12-25
著者
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