光反応性牧野草種子の休眠覚醒機構 : 第2報 エゾノギシギシ種子の登熟経過と発芽習性
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概要
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エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius L.)の登熟過程の種子形成状態および休眠性の変動を追究するため,開花後経時的に,種子の乾物重,含水率および除花被部分(nut)の種子全体に占める割合の推移を調査するとともに,各時点の種子の発芽に対する温度と光の効果を検討した。結果は次の通りである。1)エゾノギシギシ種子は,発芽能力を確保する時点から,暗黒下では一切発芽せず,光反応性の発芽機構を保有していることが明らかとなった。2)エゾノギシギシの種子形成の過程を種子の発芽習性を中心として整理すると次の3期に区分しうる。第1期:開花後10〜15日目までの期間で,乾物重の急激な増加が見られるが,種子としては未完成で発芽能力は有しない。第2期:開花後15日目から25〜30日目までの期間で,種子は乾物重の面からも形態的な点でもほぼ完成する。同時に,発芽も18℃および23℃の両温度条件下でみられる。しかし含水率はまだ50%以上もあり,外見上は未熟な様相を呈する。第3期:開花後30日から40日目にかけての期間で,含水率の急激な低下に伴い,外見的にも完熟種子に見られる茶褐色の花被片となる。そして,第2期と異なり23℃下での発芽のみ顕著に低下し,光発芽可能温度域の縮少が見られる。3)同一個体上で開花日を異にする分けつ茎別の種子形成状態は,開花後の日数で見ると,遅く開花した種子が早く開花したものよりも,すみやかに乾物重の増加あるいは,含水率の低下がみられた。同時に発芽能力の確保も,遅く開花した種子で開花後比較的早い時期にみられたが,早く開花した種子は,発芽能力の確保も遅れかつ光発芽可能温度域の縮少時期も遅くなった。4)開花日が分枝の中でも1週間程度の開きがあるにかかわらず,同一分けつ茎上の分枝を3区分して検討した結果,その区分別の種子形成状態には,大きな差異は認められなかった。
- 日本草地学会の論文
- 1974-11-25
著者
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