トールフェスク(Festuca arundinacea SCHREB.)品種・系統の出穂性,収量性及び季節生産性
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概要
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わが国暖地に適したトールフェスクの新品種開発のための基礎資料とするため,国内外で育成した31品種及び九州農試で育成した3系統の出穂性,収量性及び季節生産性の変異を検討した。出穂性及び草勢や冬の葉枯れなどの季節生産性関連形質は個体植え圃場で,収量性及び季節生産性は条播圃場で評価した。各品種・系統の各刈取り期及び年間合計乾物収量と出穂始日との間には有意な相関関係が認められ,高収であった品種・系統は極早生・早生種に限られた。季節生産性関連20形質に基づいて,クラスター分析を行った結果,6品種・系統群に分けることができ,極早生・早生品種・系統はクラスターI及びIIaを構成した。クラスターIは,わが国暖地で育成したナンリョウなど5品種・系統及びフランス・英国で育成した4品種によって構成され,IIaの品種・系統よりも年間を通じて高収で,かっ季節的生産が平準的であった。中晩生品種・系統は,クラスターIIb,III,IV,V及びVIを構成したが,その多くは,クラスターIVに属した。クラスターIIb及びIIIに属したClarine,ホクリョウなどの品種・系統は,中晩生品種・系統の中では,越夏性及び収量性が優れた。これらの品種・系統の季節生産性は,他の中晩性品種・系統よりも,むしろ極早生・早生品種・系統群との類似性が高かったので,暖地向け中晩生品種開発のための育種素材として有用であると考えられた。北アフリカ地域の自生集団をその育種素材としているMaris Jebel及びMarisKasbaは,クラスターVを構成し,冬季における葉身の枯れ上がりが少なく,早春の収量性が優れており,早春の放牧開始期を早めるための有用な特性を備えていると考えられた。個体植えにおける草勢と,条播におけるほぼ同時期の乾物収量との間には,秋季及び早春において,高い相関関係が認められたので,この時期における収量性は,個体植えによる選抜試験圃場においても,十分評価できると考えられた。
- 日本草地学会の論文
- 1991-04-30
著者
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