トールフェスク(Festuca arundinacea SCHREB.)の出穂性及び季節生産性にみられた遺伝子型と環境との交互作用
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概要
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トールフェスクの26栄養系について西合志町(標高80m)と阿蘇町(同920m)における出穂日及び年間5回(調査時期:早春,春季,夏季,秋季及び晩秋)の草勢を調査し,各形質にみられる栄養系と環境との交互作用を検討した。供試栄養系の出穂日及び各調査時期の草勢について,反復以外のすべての要因を母数模型として分散分析した結果,いずれの形質においても栄養系×試験地及び栄養系×試験地×年次において有意な交互作用が認められた。2試験地,3年次を6環境とみなして出穂日おける栄養系と環境との交互作用項に主成分分析を適用してその要因を検討した結果,第1主成分が西合志における栄養系の年次間変動,第2主成分が阿蘇におけるそれを反映していた。2試験地,2年次における各栄養系について,各調査時期の草勢計20形質(表9)の栄養系と環境の交互作用項を主成分分析した結果,第1主成分は試験地による効果,第2主成分には栄養系の季節生産性,第3主成分は初期生長及び永続性における栄養系と試験地の交互作用と強く関係していた。栄養系の由来と環境との関係については,九州地域収集集団及び米国品種に由来する多くの栄養系の草勢が両試験地で良好で,そのうち西合志により適したものは,阿蘇に適したものよりも早生で季節生産性が平準であった。また,地中海地域の自生集団に由来した2栄養系は,西合志で草勢が良,阿蘇で不良という特徴的な反応を示した。以上の結果から,栄養系の適応性と安定性については,利用の場を代表する試験地で数年間にわたって評価を行う必要があることが示唆された。そして,出穂目について交互作用の大きい栄養系は,無作為交配を前提とする多交配集団において,集団の特性に歪みを起こす要因になると考えられた。また,季節生産性については交互作用を利用して多交配集団の適応性を高めることが考えられた。
- 日本草地学会の論文
- 1994-07-30
著者
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