イタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)の耐倒伏性及び種子収量に対する選抜効果 : 2.耐倒伏性及び関連形質の遺伝率と選抜効果
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概要
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イタリアンライグラスの採種栽培における耐倒伏性選抜の情報を得るため,耐倒伏性と関連形質の遺伝率を推定するとともに,それらの選抜効果を調査した。ワセアオバとワセヒカリのそれぞれについて,耐倒伏性,種子収量,耐倒伏性×種子収量,短密穂,直立葉及び下垂葉に対する選抜系統を育成し,原品種との比較において選抜効果を検討した。異なる生育時期に4回評価した耐倒伏性のそれぞれから求めた遺伝率のうち,最も高い遺伝率はワセアオバでは5月26日調査時の0.368,ワセヒカリでは6月5日調査時の0.292であった。4回の耐倒伏性の評点の合計値を耐倒伏性とした場合の遺伝率は,ワセアオバで0.263,ワセヒカリで0.220であった。一方,種子収量の遺伝率は,ワセアオバで0.350,ワセヒカリで0.174であった。変数選択型の重回帰分析の結果,後代の耐倒伏性と重相関係数が高い形質として,ワセアオバでは葉型・節数・最上位節間重・出穂時草丈・穂型・分枝数・穂重/稈重比の7形質が選択された。同様に,後代の種子収量と重相関係数が高い形質として,ワセアオバでは穂長・種子収量・上位第二節間長・出穂日の4形質が選択され,ワセヒカリでは葉長・穂型・上位第二節間強度・穂重/稈重比の4形質が選択された。さらに,後代の耐倒伏性と種子収量の複合形質との重相関係数が高い形質として,ワセアオバでは草型・上位第二節間長・穂重・葉の下垂度・最上位節間重・出穂時草丈・百粒重の7形質が選択され,ワセヒカリでは上位第二節間強度・出穂時草丈・葉長・曲げ抵抗の4形質が選択された。耐倒伏性選抜系統の耐倒伏性は原品種と比較して顕著に高く,ワセアオバで69%,ワセヒカリで28.3%優れていた。一方,種子収量の選抜効果は両品種ともほとんど認められなかった。以上の結果より,採種栽培における耐倒伏性の選抜は個体植え段階では種子収量より耐倒伏性に重点を置き,耐倒伏性の品種・個体間差が最も顕著な開花後10日目ごろに行うのが効果的であると結論された。
- 日本草地学会の論文
- 1989-03-31
著者
-
鈴木 信治
草地試験場:(現)パシフィックコンサルタンツ株式会社
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杉信 賢一
草地試験場
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杉信 賢一
草地試験場 育種部
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杉信 賢一
パシフィックコンサルタンツ株式会社
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鈴木 信治
鹿児島県農業試験場
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小松 敏憲
Kagoshima Prefectural Agrocultural Experiment Station
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小松 敏憲
草地試験場:(現)鹿児島県農業試験場
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