アルファルファ(Medicago sativa L.)のアルミニウム耐性選抜における培地条件
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概要
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酸性土壌におけるアルファルファの生育阻害要因は,主に土壌中に含まれるアルニウムイオンによるとされており,アルミニウム耐性品種の育成が望まれている。細胞選抜法によりアルミニウム耐性選抜をする場合,通常のMS培地の塩類濃度やpH条件では所定のアルミニウム塩を添加しても沈澱してしまい,選抜に適さない。そこで細胞選抜法によりアルミニウム耐性アルファルファを選抜する場合の培地条件及び培養法について試験し,次のような結果を得た。1.MS培地に加えるKH_2PO_4濃度を,標準の170mg/lを対照区とし,処理区として対照区の1/2,1/4,1/8及び1/16に,さらにそれぞれの量のKH_2PO_4を2日ごとに補給する補給区を設け,合計9区の懸濁細胞の増殖量及び培地のpHを比較した。この結果,培地のKH_2PO_4濃度が細胞の増殖量に及ぼす影響は顕著で,濃度が低いほど細胞の増殖量は抑制されたが,2日ごとの補給区ではいずれも標準濃度の対照区以上の増殖量を示した。2.培地のpH条件を,標準濃度のMS培地及びKH_2PO_4が1/10濃度のMS培地について,それぞれ3.0,3.5,4.0,4.5,5.0,5.5及び6.0の7段階のpH処理区を設け,懸濁細胞の増殖量を比較した。この結果,培地のpHの影響は,標準MS区でとくに顕著に認められ,pH3.0及び3.5区の増殖量が著しく抑制された。1/10-KH_2PO_4MS区の細胞の増殖量は標準MS区と比較して著しく抑制されたが,1/10-KH_2PO_4MS区内ではpH4.0区が最も増殖が良かった。3.培養開始時の細胞量によるその後の増殖程度を明らかにするため,MS液体培地50ml当たりの細胞量を,0.25,0.5,0.75,1.0,1.25,1.5及び2.0gの7段階として,各区の細胞の増殖量を比較した。この結果,培養開始時に選抜培地50mlに加える細胞量が多いほど増殖量も多いが,細胞1g当たりの増殖量は0.5g区が最も多く,それ以上は量が増えるにしたがって増殖率は低下した。4.選抜培地に添加する適正アルミニウム濃度を明らかにするため,培地に添加する硫酸アルミニウム(Al_2(SO_4)_3・14-18H_2O)を,0(無添加),16.6,33.3,66.5,133.0及び266.0mg/l(Al_2(SO_4)_3・18H_2Oとして,それぞれ0.05,0.1,0.2,0.4及び0.8mM濃度)の6段階として,細胞の増殖量,培地のアルミニウム残存量及び培養細胞のアルミニウム含量を比較した。培地に添加するアルミニウムの濃度が細胞の増殖に及ぼす影響は,培養4日目までは,アルミニウム添加区が無添加区と比較して増殖が抑制されたが,8日目では0.05及び0.1mMの低濃度区ではむしろ増殖が助長された。一方,0.4及び0.8mMの高濃度区の細胞の増殖量は著しく抑制され,とくに0.8mM区では増殖がみられなかった。培地内のアルミニウムの残存量は,0.8mM区を除いては培養1日後にすでに大半が吸収されてしまうが,0.8mM区では8日後にもかなり残存していた。また,懸濁培養細胞のアルミニウム含量は,培養4日目までは培地のアルミニウム濃度が高いほど高かった。その後は,0.4mM区までの濃度区の細胞のアルミニウム含量は低下したが,0.8mM区の高濃度区では培養8日目でも細胞のアルミニウム含量は増加していた。
- 日本草地学会の論文
- 1991-04-30
著者
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