膀胱癌診断法としての膀胱洗浄液標本に対するflow cytometric DNA histogram解析の意義

概要

論文の詳細を見る
膀胱癌症例に対する膀胱洗浄液標本のFCM検索の意義につき検討した.組織学的に膀胱癌が証明された115症例より得た218検体のFCMでは160/218(73.4%)にFCM陽性所見が得られた.これを膀胱癌の組織学的悪性度と対比するとgrade-I 56.8%, grade-II 67.9%, grade-III 90.3%とhigh gradeの膀胱癌に高い陽性率が認められた.膀胱癌が証明された後膀胱保存的治療が行われた120症例の経過観察において448検体のFCM解析を行い合計666検体におけるFCM所見と組織学的膀胱癌の存在の有無につき検討すると,組織学的に膀胱癌が証明された307検体中235検体(76.5%)にFCM陽性所見が認められ他の72検体(23.5%)は陰性であった.したがってFCMのfalse negative rateは23.5%と考えられた.一方,FCM陽性所見を示した295検体中60検体(20.3%)において組織学的に膀胱癌は証明されずFCMのfalse positive rateは20.3%と思われた.以上の結果より膀胱癌に対する膀胱洗浄液標本のFCM検索は客観的な膀胱癌のスクリーニング法として,有用であると考えられた.
1988-08-20