慶応義塾大学泌尿器科における尿路結石症の臨床的観察

概要

論文の詳細を見る
尿路結石症の疫学的動向を知り,原因の診断法や再発予防策を再検討する目的で,1971年1月1日から1980年12月31日迄の10年間に当科で扱つた尿石症1,770例についての臨床統計を取つた。(1)泌尿器科新患数に対する比率は4.3±0.6%であつた。(2)96.7%が上部尿路結石症であつた。(3)男子では20歳から40歳台に多く,女子では20歳台に特に多かつた。男女比は部位別に見ると,サンゴ状石≒1:1,腎孟=1.5:1,腎杯=2:1,尿管=2.8:1で,全体では2.3:1であつた。(4)尿石症の19.4%が再発患者であり,このうち21.2%が3回目以上の再発例であつた。再発新患のもつとも多かつたのは40歳台で,26.3%を占めていた。(5)両側結石は初発新患の11.8%,再発新患の28.1%に見られた。(6)自然排石率は男子の場合,27.6%,女子では20.6%で,男子の方が高かつたが,泌尿器外科的治療を要したケースは逆に女子の方に多かつた。(7)病態の種々の面における男女間での違いや壮熟年層にかけての再発増加等の事実は,内分泌・代謝面からの系統的な原因究明の必要性を示唆している。
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1982-08-20