ヒト腎細胞癌の異質性 (Heterogeneity) に関する研究 : I. 培養細胞株 KU-2 の形態, 染色体および細胞周期について

概要

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ヒト腎細胞癌由来培養株KU-2のheterogeneityについて解析するため、single cell cloning法により13のクローン株(N-1〜N-13)を分離し、それらの形態、染色体、細胞周期について比較検討した。形態学的観察では、N-13は他のクローンと異なり、紡錘形細胞が辺縁不整のコロニーを形成し、低いN/C比、低いsaturation densityを示し、またpile upして培養液中に遊離する細胞はみられなかった。電子顕微鏡的観察では、クローンにより、microvilliの発達程度、グリコーゲン顕粒やlipid droplestの量に差がみられた。染色体分析では、13のクローンは6つの異ったモード数を示し、N-5には他のクローンにみられない個有のマーカー染色体がみられたが、同時に多くの共通マーカー染色体が存在した。FLM法による細胞周期解析では、世代時間は18.7から25.6時間と差がみられ、これは主にG1期の長さの差によるものであった。以上より、KU-2は異なる生物学的性状を有する細胞より成ることが判明した。そして、これらの異った性質を有する細胞を分離することは、癌細胞の種々の表現型を解析する上で非常に有用と考えられた。
社団法人日本泌尿器科学会の論文