泌尿器科領域におけるflow cytometryの臨床応用 : 第4報:腎細胞癌予後規定因子としてのflow cvtometric DNA-histogramの意義
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概要
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30例のヒト腎細胞癌に対し腫瘍細胞のnow cytometric DNA解析を行ない,腫瘍の病理組織学的特徴との対比を行なった.腫瘍のDNA-histogramによるploidy解析では15例がdiploidあるいはnear-diploid oatternを示したのに対し,他の15例にaneuploid patternを認めた.腫瘍細胞の異型度にともなう特徴としては, grade-Iの4例全例でdiploid oatternを示したのに対し,grade-IIは7/17例(41%)に,またgrade-IIIでは8/9例(89%)でaneuploid pattemが観察され,異型度の高い腎癌にaneuploid patternの出現が高率に認められた.腫瘍の進展度では腫瘍が腎披膜内にとどまるpT_2以下の20例中14例(70%)がdiploidであったのに対し,pT_3以上の10例中9例(90%)にaneuploidのDNA-histogramが認められた。さらに病理学的に腫瘍の静脈への浸潤が明らかな12例中10例(83%)がaneuploid patternを呈したのに対し,静脈浸潤の認められない18例では5例(28%)にのみaneuoloid patternが観察されたにすぎなかった。しかしながら腫瘍の遠隔転移の有無,リンパ節転移の有無,細胞型の差によるDNA-histograniのploidy patternに明らかな差異を認めなかった.以上の結果より,DNA-histogramの解析結果が腎腫瘍の病理学的予後規定因子と直接的に相関しているとは言えない.しかし腫瘍の浸潤性と密接な関連をもつことが予想され,腎腫瘍の細胞生物学的特性あるいは組織化学的指標として有力な一法となると考えられた.
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
- 1987-05-20
著者
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中島 淳
慶応義塾大学前立腺癌研究会
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田崎 寛
慶応義塾大学前立腺癌研究会
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橘 政昭
慶応義塾大
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実川 正道
慶応義塾大
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畠 亮
慶応義塾大
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馬場 志郎
慶応義塾大学
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実川 正道
慶応義塾大学 泌尿器科
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出口 修宏
慶応義塾大
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飯ケ谷 知彦
慶応義塾大
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中薗 昌明
慶応義塾大学泌尿器科学教室
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飯ケ谷 知彦
国立霞ケ浦病院泌尿器科
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田崎 寛
慶応義塾大学 泌尿器科
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