乳幼児の音声模倣能力の獲得過程における調音ジェスチャの役割(聴覚・音声/一般)

概要

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乳幼児が言語的な発声を獲得する過程には,そもそも「あ」を/a/であると認識する知識をどのように獲得するのかという疑問がある。本論では,乳幼児の発声と大人の発声が音響特性的にかなり異なることから,音響特性によって親の/a/と乳幼児(自分)の/a/が同じであると判断できない場合であっても,乳幼児が音声模倣を獲得できるのかを問い掛ける。この問いに対して,本論では音響特性での同一性判断に代わって,親が返す真似行動を手掛かりにした音声模倣の獲得モデルを構築し,計算機シミュレーションと,ヒトとのインタラクション実験によってその動作を確認した。結果として,計算モデルにおける乳幼児エージェントは,親がいつでも真似行動を返さない場合であっても,真似しようとする目標状態を内部に維持することによって,音声模倣を獲得できる可能性があることを確認した。この結果に基づいて,乳幼児は,獲得した音声模倣時の調音ジェスチャの同一性を手掛かりに,複数の話者に対する同一性認識の形成を可能にするのではないかということを議論する。
社団法人電子情報通信学会の論文
2007-07-19