脂肪性肝炎の国際比較
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概要
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日本においてはB型肝炎ウィルス感染での慢性化のほとんどを占める母親から新生児への垂直感染に対する感染防御事業や輸血血液でのHBVおよびC型肝炎ウィルス(HCV)のスクリーニングの施行により,新たなウィルス肝炎患者の数は顕著に減少している。それとは相対的に従来比較的目立たなかった肝炎ウィルス感染の認められない肝疾患の比重が高まってきた。例えば,アルコール性脂肪性肝炎(alcoholic steatohepatitis, ASH)と非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis, NASH)とに大別される脂肪性肝炎もその一つである。NASHとは非飲酒家に生じる。肥満,糖尿病,高脂血症,急激なダイエット,空腸・回腸吻合術,ある種の薬物などを起因とした肝機能不全を生じる疾患概念で,経過は緩慢とされるが,HBVおよびHCVなどの肝炎ウィルス感染が確認できない非B非C型肝硬変の一部は本疾患の末期像とも考えられ,少数ながら肝細胞癌発生の報告もある。欧米諸国に多い疾患で,日本においても食事内容の欧米化,あるいは飽食の傾向とともに患者数が増加しており,重要な生活習慣病,あるいはメタボリックシンドロームの一つとなっている。HBV,HCV感染が肝疾患の主流を占める開発途上国では医療関係者の間でもまだ関心が低く,これらの地域からの報告は少ない。しかしながら,タイにおける肥満者の頻度は日本より高く,近い将来NASHがこの地域において重要な疾患となる可能性がある。本研究ではタイ国,チェンマイ地域でのNASHの現状を知るとともに,長崎大学第一内科の症例を含め,両国のNASHの臨床病理学的比較研究をおこなうことを目的とする。また,類似した組織像を示し,鑑別が困難とされるASHとの組織学的異同性についても究明したい。
- 長崎大学の論文
著者
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市川 辰樹
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻展開医療学講座消化器内科
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鳥山 寛
長崎大学熱帯医学研究所病変機序分野
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鳥山 寛
長崎大学熱帯医学研究所病変発現機序
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鳥山 寛
長崎大学熱帯医学研究所病変発現機序分野
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市川 辰樹
長崎大学第一内科
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鳥山 寛
長崎大学 熱帯医学研究所 病変発現機序分野
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鳥山 寛
長崎大学熱帯医学研究所
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市川 辰樹
長崎大学第1内科
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