脳幹梗塞による脳死症例をめぐって : 脳死判定医制度の提言
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概要
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症例は高血圧未治療の54歳男性。口唇のしびれ,頭重感,次いで意識もうろうとなり,緊急入院した。意識障害は変動したが,次第に進行して昏睡になり,翌朝には無呼吸となり,人工呼攻器が装着された。CTスキャンで脳幹は著明に腫脹し,脳幹梗塞と診断された。脳波は徐々に平坦化し,第8病日に脳死が強く疑われ,家族の了解の下に,厚生省厚生科学研究費特別研究事業「脳死に関する研究班」の脳死判定基準に基づく「千葉大学医学部脳死判定基準第二次試案」に則し脳死判定を行った。深昏睡,全脳幹反射消失,規定の脳波検査で電気的活動はなく,これらは終始不変であった。第一回の無呼吸テストで腹直筋に不随意収縮がみられ,判定を保留した。第二回も同じ収縮を生じたが,自発補助呼吸でなく,脊髄性ミオクローヌスと診断し,脳死状態と判定した。第三回の無呼吸テストでは脊髄性ミオクローヌスは出現せず,脳死状態と判定した。その後心停止を以て個体死とした。脳死判定2時間後のMRIで脳の全体的な無構造化が認められた。MRI撮影後2時間での剖検で脳の粥状化が確認された。以上から(1)脳死を判定する上で上記「第二次試案」に根本的疑義はなかった。(2)判定の実施面で相応の臨床神経学の経験が必要であった。そのため(3)従来脳死判定に投げかけられている疑問の大半が医療・医師不信を背景としていることも考慮し,「脳死判定医制度(仮称)」を設けるべきであると結論した。「脳死判定基準」を遵守し,相応の臨床経験を以てすれば,脳死状態の判定は可能であるが,脳死を個体死とするか否かを含め,脳死者の扱いについては本人の生前の意志,家族の意見が尊重されるべきものと思われる。
- 千葉大学の論文
- 1991-08-01
著者
-
福武 敏夫
千大
-
福武 敏夫
千葉大学医学部神経内科
-
平山 惠造
千葉大学医学部神経内科学講座
-
南雲 清美
千葉大学医学部神経内科学講座
-
南雲 清美
千葉大学神経内科
-
平山 惠造
千葉大学医学部神経内科
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