南九州老齢照葉樹林における林分構造と樹種組成の時系列変化について
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概要
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WWF植物群落レッドデータブックにおいて, 対策が必要とされている高隈山系のイスノキ林・ウラジロガシ林保全管理指針を作成する第一段階として, 鹿児島大学高隈演習林内の老齢照葉樹林に設置されている固定試験地測定データ(3時点, 10年間)をもとに, その林分構造と樹種組成の変化について検討した.全出現樹種28種をイスノキ, Quercus属4種(アカガシ, イチイガシ, ウラジロガシ, ツクバネガシ), スダジイ, マテバシイ, タブノキ, その他の高木性樹種, 低木性樹種の10樹種グループに類型化し, 解析を行った.林分構造の変化として次の点が挙げられた.立木本数ではアカガシとウラジロガシが大きく減少し, 低木性樹種が増加した.また胸高断面積合計ではアカガシ, ウラジロガシおよびスダジイが1987年〜1992年に大きく減少した.直径分布では, イスノキ, アカガシおよびウラジロガシが一山型を示し, 低木性樹種はL字型を示した.また, アカガシ, ウラジロガシおよびスダジイに枯損が多く発生していた.樹種グループ組成をSDRと相対個体密度と相対胸高断面積で検討したところ, イスノキはほぼ一定, アカガシ, ウラジロガシおよびスダジイは大きく減少し, タブノキと高木性樹種および低木性樹種は増加傾向にあった.また, 各樹種の更新の可能性についても検討を行ったところ, イスノキとアカガシ, ウラジロガシは更新木が存在せず, 時間的に連続的な更新が行われておらず, これらの樹種の更新が比較的大きな攪乱に依存していると推測された.この林分は今後, イスノキを優占種として, 低木性樹種の本数割合の高い林分に推移していくものと考えられた.
- 鹿児島大学の論文
- 1999-03-31
著者
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