マウス乳腺の実質および脂肪組織とその血管分布におよぼす下垂体除去の影響

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下垂体の除去が, 乳腺組織, 特に導管, bud, 腺胞および脂肪組織とその血管分布に如何なる影響を与えるかを検索するために, マウスを用い, whole mount標本および組織標本を作成して観察した.1.成熟マウスの下垂体除去後の体重は, 5日目までに急激に減少し(約7g), 以後60日目までほぼ一定であった.卵巣, 副腎の重量は, 5日目で無処置の約1/2となり, 以後徐々に減少して, 60日目ではそれぞれ無処置の約1/5,1/3の重さであった.乳腺構造は, 5日目では無処置のものと大差はないが, 10,15日目では, 一部のbudに退化がみられ, 20,25日目では, budの退化が全般的に起こり, 導管壁の毛細血管叢は疎になった.30,40日目になると, budは著しく退化し, 導管は一部細くなり, また, 血管の分布密度も疎になった.50,60日目では, budは完全に退化し, 乳腺実質は導管のみからなり, また, 間質の脂肪細胞の直径は小さくなり, これらに分布していた血管に縮れが生じていた.2.泌乳マウスの下垂体除去では, 体重は1〜5日目で著しく減少し(8〜12g), 以後30日目までほぼ一定であり, 卵巣, 副腎の重量は, 10日目で無処置の約1/2,30日目ではそれぞれ約1/5,1/3の重さであった.下垂体除去後5日目の乳腺は, すでに腺胞の崩壊とこれに代って脂肪組織の出現をみるが, 無処置のものより量的に少なかった.10,15日目では, 腺胞の崩壊は進み, 導管の周囲や小葉間には結合組織の増加がみられ, また, 脂肪組織の出現が少ないため血管に縮れが生じ, 全般的に血管分布密度も低かった.20,30日目では, 腺胞は完全に退化し, 実質は導管のみからなり, また, 脂肪組織は無処置のものより少なく, 個々の脂肪細胞の径も小さかった.これらに分布する血管には縮れが多く, 導管およびその周辺部の血管分布も無処置のものより疎であった.3.以上の観察から, 処女期のマウスの下垂体除去は, 乳腺実質および脂肪組織とその血管分布の退行に影響を与え, 泌乳期の下垂体除去は, 脂肪組織の出現の阻止および腺胞の不規則な退化とそれに伴う血管の退縮を起こすことがわかった.
鹿児島大学の論文
1978-03-19

マウス乳腺の実質および脂肪組織とその血管分布におよぼす下垂体除去の影響

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