マウスの乳腺組織とその血管構築に関する走査電顕的観察 : 処女, 妊娠, 泌乳および退行期の変化

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乳腺の実質や間質と血管, とくに毛細血管の分布と構築が処女, 妊娠, 泌乳および退行という生理的変化に伴っていかなる変化を示すかを知る目的で, JCL-ICR系雌マウス47例を用い, 腹鼠径部第1乳腺の血管の合成樹脂注入鋳型標本および凍結割断標本について, 走査電顕を用いて観察した.1.腹鼠径部第1乳腺に分布する血管は, 外胸, 腸腰および浅腹壁動・静脈が主流となり, これらは中心リンパ節の腹壁側上部で吻合, 三叉路を形成し, 各静脈の径は泌乳中期に最大であった.2.処女期の乳腺は, 脂肪細胞に取り囲まれた導管およびbudからなり, 導管系は毛細血管叢によって立体的に取り囲まれ, 乳腺辺縁部にはループ状の毛細血管網がみられた.3.妊娠に伴って導管系, budおよび腺胞の著しい増加がみられ, これらを取り囲む毛細血管の分布密度は高まり, 妊娠初期から中期にかけて導管周囲の毛細血管叢がとくによく発達し, 各小葉には毛細血管網が多数形成されており, 1個の腺胞は3〜数本の毛細血管からなる籠に収まっていた.妊娠末期には, 導管および腺胞を取り囲む毛細血管はさらに密になっていた.4.泌乳前期では, 導管, 腺胞を取り囲む毛細血管の分布は密になり, 立体的な多数の分岐と吻合が見られ, 毛細血管そのものの蛇行が認められた.中期には血管の分布密度は最大となり, 鋳型標本では樹海状を呈し, また, 毛細血管の蛇行は最も顕著であった.後期では, 依然として導管および腺胞周囲は蛇行した毛細血管に取り囲まれていた.5.退行期では, 実質の急激な退行に伴い, 毛細血管は分岐や蛇行が減少し, やがて腺胞に代って出現した脂肪組織に分布するようになった.以上の観察より, 乳腺実質および脂肪組織の発達, 退縮とこれらに分布する毛細血管構築とは密接な相互関係をもち, とくに毛細血管は泌乳最盛期を頂点とする機能形態的対応と思われる特異的な立体構築を腺胞周囲に形成していくことがわかった.
鹿児島大学の論文
1988-03-15

マウスの乳腺組織とその血管構築に関する走査電顕的観察 : 処女, 妊娠, 泌乳および退行期の変化

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