マウス乳腺の脂肪組織に関する形態学的研究 : II.妊娠, 泌乳および退行期の乳腺脂肪組織の変化 : 特に腹腔内脂肪組織との比較

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乳腺の脂肪組織の形態と機能の本質を解明することを目的として, ICR-JCL雌マウス(84例)を用い, 妊娠期(妊娠5〜18日目), 泌乳期(分娩後5〜20日目)および退行期(離乳後5〜20日目)の乳腺と腹腔内の脂肪組織とを組織学的および計測学的に検索し, 比較検討した.1.乳腺の重量は, 妊娠5日目で約129mgで, 以後, 徐々に増加し, 泌乳10,15日目では, 約645mgに達したが, 離乳5日目では, 約128mgと著しく減少した.また, 乳腺域の大きさは, 乳腺重量と同様の傾向を示し, 特に泌乳15日目では, 約3.30cm×1.54cmと全期間を通して最高の大きさを示した.2.妊娠5日目の乳腺の脂肪組織は, 乳腺実質の発達によって減少し始めるが, ほとんど約51.0μ×36.2μの大きさのunilocular脂肪細胞で占められ, また, 子宮周囲および卵巣周囲の脂肪組織も形態的には, 乳腺と同様であった.10,15日目の腹腔内の脂肪組織は, 径が幾分大きい, unilocular脂肪細胞のみからなっていた.しかし, 妊娠末期の18日目では, 再び径は小さくなり, 特に腸間膜には, multilocular脂肪細胞がみられた.3.泌乳5日目の乳腺の脂肪組織は, 腹腔内の脂肪組織と共に, 急激な脂肪滴の消失がみられ, 径も小さくなり(約21.3μ×16.3μ), 10,15日目では, 腺胞の発達によって, 脂肪細胞は, ほとんどみられなかった.しかし, 腹腔内の脂肪組織は, 消失することなく, multilocular脂肪細胞と腺細胞様の脂肪細胞の形で残っていた.4.離乳5日目の乳腺の脂肪組織は, 腺胞の崩壊によって, 出現し始め, それらは, 腹腔内の脂肪組織と同様に, 多くのmultilocular脂肪細胞と少数のunilocular脂肪細胞からなっていた.10日目以降では, 乳腺, 子宮周囲および卵巣周囲の脂肪組織は, unilocular脂肪細胞で占められ, 処女期と同様の形態であった.しかし, 腸間膜では, 部分的にmultilocular脂肪細胞がみられ, 大きさは, 他の部位のものより小さかった.5.以上の観察結果から, 乳腺の脂肪組織は, 形態的には腹腔の脂肪組織と大差はなかったが, 乳腺の実質の発達および退行に伴って, 大きく消長することがわかった.また, 腹腔内の脂肪組織も生体の生理的変に応じて, 乳腺と同様に変化し, 特に妊娠末期から泌乳期においては, 腺胞の発達または泌乳のために, なんらかのエネルギー源として動員されることが示唆された.
鹿児島大学の論文
1976-03-20

マウス乳腺の脂肪組織に関する形態学的研究 : II.妊娠, 泌乳および退行期の乳腺脂肪組織の変化 : 特に腹腔内脂肪組織との比較

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