移植乳腺の血管新生と血管分布について

概要

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乳腺の実質および脂肪組織と血管との関連を明らかにするために.生後60日齢のICR-JCL雌マウス(163例)を用い, 乳腺の移植を行ない, 移植後の乳腺実質の発達と血管の新生およびその分布との関連を観察し, 正常発育時のものと比較検討した.1.移植5日目の移植片は, 周囲を結合組織でとり囲まれ, 一般に卵円形を呈し, 乳腺実質はHostマウスのものに比べ, 一部に退縮がみられた.血管は, この時期に新生され, 移植片の周囲から2〜3枝をもって, 結合組織と共に小葉内に入って, 一部の実質に分布していた.移植後の日齢が進むにつれて, 血管は, 移植片の中心部に向って分枝し, 30日目では, 導管の伸長とBudの分化に伴って, 導管に沿って伸びた血管は, 導管やBudを密にとり囲み, その付近の脂肪組織に広く分布していた.また, 脂肪組織への血管は移植片の周囲から, 直接分布するものもあり, これらは導管からのものと互いに吻合していた.2.妊娠5日目の移植乳腺は, 脂肪組織の中の毛細血管網が密になり, この血管網の内腔に向って, Budの分化がみられ, 妊娠10日目では, Budの分化・増殖が著しくなり, 腺胞の形成がみられた.妊娠15日目では, 移植片の脂肪組織のほとんど全域に, 腺胞が形成され, 血管は導管壁に毛細血管叢を形成し, また, 腺胞を密にとりまいて分布していた.3.泌乳期の移植乳腺は, Hostマウスの乳腺と同様の乳腺構造を示し, 導管腔や腺胞腔には, 分泌物の貯留がみられた.血管は, 小葉内に広く分布し, 腺胞は毛細血管によって, 密にとり囲まれていたが, 導管壁の毛細血管叢は, Hostマウスのものより疎であった.なお, 発育しなかった移植片は, 結合組織におきかえられ, 血管分布も少なかった.4.以上の観察結果から, 発達した移植乳腺には, 必ずHostからの血管の新生がみられ, また, 腺胞の形成には, 脂肪組織を基盤とする毛細血管網の発達を必要とすることが示唆された.なお, 本論文の要旨は, 1973年4月, 第75回日本獣医学会において発表した.
鹿児島大学の論文
1974-03-20

移植乳腺の血管新生と血管分布について

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