ブナ(Fagus crenata Blume)種子消滅に対する冬季積雪の影響.
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概要
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1.冬季間におけるブナ種子の齧歯類による持ち去りに対する積雪の影響を,日本海型ブナ林のブナ平と太平洋型ブナ林の三頭山で実験的に調べた.成熟種子を1993年の秋にブナ平で採集し,さらに水選によって充実種子と非充実種子にわけた.両調査地でこれらを転げ落ちないようにナイロン網上に設置し,翌春に残存種子数と発芽した実生の状態を記録した.2.根雪のない三頭山では,充実種子のほとんどと,非充実種子の半分ほどが齧歯類に持ち去られた.いっぽう,冬季中積雪のあるブナ平では,充実種子・非充実種子とも2,3割程度しか持ち去られなかった.3.三頭山に設置したナイロン網には多くの穴があけられ,網をはがすとネズミによると思われる坑道がいくつも掘られていた.しかし,ブナ平に設置したナイロン網は,1つを除き破られることはなかった.4.これらの結果から,ネズミなどの齧歯類は,種子落下後,より充実した種子を好み盛んな捕食活動をとるが,冬季中積雪のある立地ではこの活動が制限されることがわかった.5.この結果は,雪の多い日本海型ブナ林ではブナの実生が豊富だが,雪の少ない太平洋型ブナ林では実生が少ない事実をよく説明する.
- 千葉大学の論文
- 1995-03-30
著者
-
島野 光司
信州大学理学部
-
島野 光司
千葉大学園芸学部
-
島野 光司
横浜国大環境研
-
島野 光司
信州大学理学部物質循環学科
-
沖津 進
千葉大学・園芸学部・緑地生態学研究室
-
沖津 進
千葉大学園芸学部環境縁地学科
-
島野 光司
千葉大学・園芸学部・緑地生態学研究室
-
増澤 直
東京農工大学大学院・連合農学研究科
-
島野 光司
横浜国立大学環境科学研究センター
-
増澤 直
東京農工大学大学案農学研究科
-
増沢 直
東京農工大学・院
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