至適矯正力を多様な歯の移動条件から評価する研究(第 1 報) : 傾斜移動を行った際の歯の移動量, 歯根吸収, 変性組織量による比較
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究の目的は, 多様な歯の傾斜移動条件において, その歯の移動量, 歯根吸収窩長, 変性組織の断面積を計測, 比較することにより至適矯正力を評価することである.ウイスター系ラット(122匹, 10週齢)の上顎第一臼歯に対しニッケルチタン線による0.8g, 1.6g, 4g, 8g, 18gの矯正力(NT群)またはステンレス線による8g, 18gの矯正力(ST群)を用いて1日間, 7日間, 14日間, 21日間, 28日間の頬側移動を行った後, 2.5%グルタールアルデヒドで灌流固定行い, 光顕用資料を作製した.検鏡領域は最大圧迫部を含む1000μm×500μmの領域に認められた歯根吸収窩長および変性組織の断面積をリアルタイム画像解析装置を用いて計測し, 歯の移動量と合わせて比較検討した.最も矯正力の弱いNT群の0.8g(3.21g/cm^2)および1.6g(6.42g/cm^2)ではトルイジンブルー染色性の変性組織は認められず, 歯根吸収は対照群に近いものであった.これら実験群の成長分を差し引いた28日間の歯の移動量は前者で0.06mm, 後者で0.2mmとわずかであった.他方, 4g(16.22g/cm^2)以上の実験群には変性組織が認められ, ST-8gを除くこれら実験群の歯の移動量の平均値は0.52mmから0.67mmの範囲であった.歯根吸収窩長はこれら4g以上の実験群の間に有意差は認められなかったが, 変性組織の断面積では8g以上の実験群の多くがNT-4gを有意に上回った.これらの実験結果から, ラット上顎第一臼歯の傾斜移動では4g程度, ヒト上顎第一小臼歯に換算して41.4g程度の矯正力が, 歯周組織に対し目立った病理的変化を生じさせることなく効果的に歯の移動を行うことができるものと推測された.
- 日本矯正歯科学会の論文
著者
-
桑原 洋助
鶴見大学 歯学部 矯正学教室
-
中村 芳樹
鶴見大学歯学部歯科矯正学教室
-
桑原 洋助
鶴見大学歯学部歯科矯正学教室
-
野田 晃司
鶴見大学歯矯正学
-
桑原 洋助
鶴見大学歯学部矯正学教室
-
吉井 妙子
鶴見大学歯学部矯正学教室
関連論文
- RED system を応用して上顎骨前方移動を行なった右側口唇口蓋裂患者の術後経過
- きわめて長い根管を有する歯の抜髄例
- 下顎前突症患者に対する咬合平面の時計方向回転を行う上下顎移動術の適用
- 側面頭部 X 線規格写真より見た骨格性下顎前突外科症例患者の前頭洞の大きさについて
- アクロメガリー・口蓋裂を伴った下顎前突症患者の治療経験
- 骨格性下顎前突症における外科的矯正治療後の軟組織側貌の予測
- 女子骨格性下顎前突の思春期における顎顔面頭蓋の形態変化について : 矯正単独治療症例と外科的矯正治療症例の比較
- チームアプローチにより唇顎口蓋裂にインプラントを応用した1例
- 鶴見大学歯学部附属病院矯正科の過去 25 年間における抜歯部位および頻度についての検討
- ラット歯根膜細胞のlaser microdissectionによるm-RNAの解析
- 顎矯正手術における上顎骨位置決めの精度に関する検討
- 中間顎骨切り術および顎裂部骨移植術を併用し咬合形成を行った両側口唇顎裂の1症例
- 光重合レジンで接着したメタルブラケットの接着強さに及ぼす照射時間の影響
- 歯周病罹患老齢ラットにおける実験的歯の移動に伴う破骨細胞の動態
- マルチブラケット装置装着患者の臨床的カリエスリスク評価
- 外科的矯正治療を行った骨格性下顎前突症例の形態的, 機能的経時評価
- 6自由度下顎運動再現ロボット(6DOF/R0)の試作
- 頭蓋顎顔面歯槽部三次元座標測定装置の性能評価
- 本教室で開発した顎口腔機能検査システムとその臨床評価
- 至適矯正力を多様な歯の移動条件から評価する研究(第1報) - 傾斜移動を行った際の歯の移動量,歯根吸収,変性組織量による比較 -
- 三次元形状計測システムEMS98-3Dによる口腔模型の計測 : 上顎急速拡大装置による口蓋の形態変化
- 歯根膜のアルカリ性ホスファターゼはphosphatidylimsitoleを介して歯根膜線維と連結している
- 至適矯正力を多様な歯の移動条件から評価する研究(第 2 報) : 傾斜移動を行った際の圧迫歯根膜に出現した破骨, 破歯細胞の吸収活性による比較
- 至適矯正力を多様な歯の移動条件から評価する研究(第 1 報) : 傾斜移動を行った際の歯の移動量, 歯根吸収, 変性組織量による比較
- スプリント療法後に矯正治療を行った若年者の片側クローズドロックの1治験例
- 持続的機械刺激を加えた歯根膜における新生細胞の分布
- 骨格性下顎前突症における下顎 symphysis の形態変化について : 縦断的資料による
- 顎機能の臨床的診査 : ナソヘキサグラフを用いて
- 正常咬合者の開閉口運動における下顎切歯および下顎頭の運動解析
- 成熟雄性ラットの歯の移動の血清BGPへの影響
- 汎用型顎口腔機能総合解析システムの開発
- 蝶後頭軟骨結合の磁気共鳴映像による観察
- B-20 9 : 10 歯周病に罹患した老齢ラットの実験的歯の移動時に認められた組織変化について
- 25. 歯の移動を行なった際の成熟ラット臼歯歯根膜の未固定非脱灰凍結切片の観察
- 正常歯根膜および実験的歯の移動の際の歯根膜の走査電子顕微鏡的研究
- 歯の移動時に圧迫側歯根膜に出現する変性組織の石灰化について
- マイクロCTによるラット臼歯歯根膜の機能状態での観察
- 顎変形症のオーバーデンチャーによる補綴治療
- 外科的矯正治療を行った骨格性下顎前突症例の長期術後経過に関する研究
- 術前矯正治療における下顎骨および下顎頭の位置変化について
- 小臼歯抜歯を行わない下顎臼歯遠心移動による治療法について : 思春期性成長期以後の反対咬合 4 治験例での検討
- 実験的歯の移動時に出現した変性組織を吸収する異物巨細胞のチトクローム C オキシダーゼ活性の検出
- 矯正5誌におけるランダム化比較試験論文の調査 : 2003年から2007年の5年間において
- 包括医療としての矯正治療の実際 : 保存,ペリオ,補綴臨床に関連して(特別講演要旨,学術大会,第28回北海道矯正歯科学会大会)
- P-33 歯根膜線維芽細胞におけるCXCL12産生およびその機能の検討 : 再生医療に対する安全性評価の基礎研究(ポスター)