蛍光 X 線分析装置による矯正用金属材料表面の金属元素の定量分析
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概要
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近年, 金属によるアレルギーが問題になってきている.矯正歯科領域でも, 多くの矯正材料に金属が使用されているため, 金属アレルギーをもつ患者に対して治療をする際, 材料の選択は, 重要である.そのため矯正用金属材料の金属成分を正確に把握しておくことが必要である.本報告は, 蛍光X線分析装置を用いて矯正用金属材料の表面成分を調べた.1. 分析に用いた蛍光X線分析装置の安定性について検討した.単一金属に対する分析値の標準偏差は, 繰り返し性および再現性で0.1%以下, 合金ではそれぞれ0.07%以下, 0.18%以下で安定であり再現性もあった.2. 矯正用金属材料の表面元素の定量分析ではニッケル・チタン系ワイヤーはTiとNiが主な成分であり, Niの割合は重量比で55%であった.コーティングニッケル・チタン系ワイヤーは, Auが80%以上でNiの割合は, ニッケル・チタン系ワイヤーと比較して非常に少なかった.本報告で調べたワイヤー類では, ブラスワイヤーおよびチタン・モリブデン系ワイヤー以外は, すべてNiが含まれていた.ブラケット類, その他の金属製品のほとんどはFe, Cr, Niが多く含まれていた.しかし, コーティングブラケットは, Auが61%で残りPt, FeおよびAgでNiは, 認められなかった.矯正用金属材料の成分にはNi, Cr, Fe等が多く含まれていることがわかった.これらの金属にアレルギーのある患者に対しての矯正治療には材料の十分な検討が必要であることが示唆された.また, コーティングでアレルゲンとなるような金属の表面への露出が少なくなるので, アレルギー患者への影響は軽減できると考える.
- 日本矯正歯科学会の論文
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