遊離ラット肝細胞の脂質過酸化に及ぼすクロムの影響
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概要
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遊離ラット肝細胞の脂質過酸化に対する6価(Cr VI)及び3価クロム(Cr III)の影響を調べるため,遊離肝細胞を種々濃度の各種クロム化合物とともに37℃,60分間培養し,脂質過酸化をチオバルビツール酸法で測定,細胞障害を培養液中へのLDH遊出により検討した結果,次の成績を得た. 1) 遊離肝細胞の脂質過酸化は,125〜1000μM濃度のCr III添加により抑制された. Cr VIは低濃度(125μM)で脂質過酸化を抑制したが,高濃度(1000μM)では促進した. 2) 肝細胞からのLDH遊出は,Cr VI (K_2 Cr_2 O_7, 125〜1000μM) により促進されたが,Cr III (Cr (NO_3)_3)では250μM以上の添加で有意に抑制された. 3) Cr VI添加で誘起された脂質過酸化は,抗酸化剤N,N'-diphenyl-p-phenylenediamine α-tocopherol, diethyl dithiocarbamateで抑制されたが,LDH遊出は抑制されなかった. 4) グルタチオン枯渇剤(diethyl maleate)で前処理した肝細胞においては,Cr VIによる脂質過酸化がCr VI濃度に依存して増強され,さらにこの増強作用は,GSHの添加により消失した. 5) アスコルビン酸による脂質過酸化は,Cr VI及びCr IIIの添加で著しく抑制された. 以上の成績から,遊離肝細胞における脂質過酸化はCr VIにより誘起され,Cr IIIにより抑制されることが明らかになり,さらに,Cr VIによる脂質過酸化は細胞内のGSHと一部関連するが,細胞障害とは直接関連していないことが示唆された.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1988-02-15
著者
-
相川 勝弘
北里大学獣医畜産学部獣医公衆衛生学教室
-
上野 俊治
北里大学獣医畜産学部獣医公衆衛生学研究室
-
古川 義宣
北里大学獣医畜産学部獣医放射線学講座
-
諏佐 信行
北里大学獣医畜産学部獣医公衆衛生学教室
-
板垣 伊織
北里大学獣医畜産学部獣医公衆衛生学教室
-
小宮山 毅
北里大学獣医畜産学部獣医公衆衛生学教室
-
高島 由佳
北里大学獣医畜産学部獣医公衆衛生学教室
-
上野 俊治
北里大学獣医学部・獣医公衆衛生学教室
-
上野 俊治
北里大学獣医公衆衛生学教室
-
諏佐 信行
北里大・獣医・公衆衛生
-
古川 義宣
北里大学獣医畜産学部獣医公衆衛生学教室
-
諏佐 信行
北里大学獣医畜産学部
-
諏佐 信行
北里大学 獣畜
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