6価クロムの細胞毒性に対する銅化合物の拮抗作用
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概要
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6価クロム化合物(重クロム酸カリウム)の細胞毒性におよぼす各種金属化合物(硫酸銅, 硫酸亜鉛, 硝酸カドミウム, 酢酸鉛および亜セレン酸ナトリウム)添加の影響を, HeLa細胞を用いて, 処理後の増殖率および細胞内クロム含量から比較検討した. 1. 重クロム酸カリウム0.5μg/ml (1.7μM)を単独処理した3日後の細胞増殖率は, 対照の約60%であったが, 硫酸銅0.4μg/ml (1.6μM)あるいは2.0μg/ml (8μM)と併用処理した場合, それぞれ約80%の増殖率を示した. また硫酸銅2.0μg/ml併用処理は, 高濃度の重クロム酸カリウム(1.0μg/ml, 3.4μM)の増殖抑制効果に対しても著明に拮抗した. 銅以外の金属化合物では, 試験した濃度(硫酸亜鉛, 0.4-40μg/ml, 1.4-140μM; 硝酸カドミウム, 0.0016-1.0μg/ml, 5.2nM-3.2μM; 酢酸鉛, 0.08-10μg/ml, 0.21-26μM; 亜セレン酸ナトリウム, 0.0008-0.1μg/ml, 4.6-580nM)で著明な増殖の回復は認められなかった. 2. 重クロム酸カリウム1.0μg/ml (3.4μM)単独処理9時間後の細胞内クロム含量は, 約0.16μg/10^6cellsであったが, 硫酸銅2.0μg/mlとの併用処理では約0.10μg/10^6 cellsを示し, 約4O%の減少が認められた. 銅以外の金属化合物との併用処理(硫酸亜鉛40μg/ml, 140μM; 硝酸カドミウム0.008μg/ml, 26nM; 酢酸鉛2.0μg/ml, 5.3μM; 亜セレン酸ナトリウム0.1μg/ml, 0.58μM)でもクロム含量の減少傾向が認められたが, 硫酸銅のそれに比較すると小さかった(約15%以下). 3. 酢酸銅, 硝酸銅あるいは塩化第二銅(銅濃度として8μM)と重クロム酸カリウム1.0μg/mlとを併用処理した場合, 9時間後の細胞内クロム含量をクロム単独処理群のそれに比較すると, 40-50%の減少を示した. 上記の成績から, 銅化合物はHeLa細胞のクロム取込みを抑制し, これが6価クロムの細胞毒性の軽減と密接な関係を有するように考えられた.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1978-08-25
著者
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