シロクローバ(Trifolium repens L.) 混播・多回刈り条件下におけるチモシー(Phleum pratense L.)およびメドウフェスク(Festuca pratensis Huds.)の乾物収量の差異と関連形質
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概要
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シロクローバ混播,年間5-6回の多回刈り処理を加えた条件下で,チモシーおよびメドウフェスクの乾物収量,草種構成割合の季節的推移を調査した。また,その草種間差異と単播条件下における草種の刈取り時の生育段階,分げつ数,平均1茎重,畦幅(株の広がり),草丈伸長速度,乾物重増加速度(CGR),および基底部の乾物重(刈株重),非構造性炭水化物(NSC)および窒素の含有率および含有量の推移との関連性を検討した。なお,用いた品種はチモシー「ホクシュウ」,メドウフェスク「トモサカエ」,シロクローバ「ラモーナ」であった。また単播区では手取り除草を実施した。その結果,単播条件下では4年目まで欠株は発生せず,刈取り時の1m^2当たりの総分げつ数も2,000本前後の値を下回ることはなかった。一方混播条件下では,単播条件下に比較して,メドウフェスク区よりもチモシー区において,チモシーの乾物収量の減少割合が大きく,とくに3年目の7月(本研究では4番草)以降,その傾向が顕著になった。このことは,混播条件下では,チモシーおよびメドウフェスクの草丈のような上方向への伸長生長よりも,被度が著しく低下したことに起因していた。この被度低下の車種間差異は,刈取りの影響によるよりも,主としてシロクローバに対する競争力の差異を反映したものと考えられた。シロクローバ混播条件下におけるチモシーおよびメドウフェスクの乾物収量および構成割合の季節的推移にみられた草種間差異は,株の広がり,草丈伸長速度,CGR,刈株重,NSC並びに窒素の含有率や含有量よりも,分げつの再生の態勢の草種間差異との関連性が高いことが示唆された。すなわち,4番草(7-8月に生育した)の再生に影響を及ぼしたと思われる3番草(6-7月に生育した)の刈取り時の節間伸長茎率は,チモシーの方がメドフェスクよりも高い値を示し,一方では,刈取り後,再生可能な栄養生長茎の数はチモシーの方が少なく,その1茎重もメドウフェスクに比較して小さいことから,刈取り後は再生力が劣り,シロクローバに対する競争力が劣ったと考えられた。このことから,当該時期における分げつ数の確保が,その後の生産量を決定する要因の一つとして重要であることが示唆された。
- 日本草地学会の論文
- 2002-04-15
著者
-
藤井 弘毅
北海道立上川農業試験場天北支場:(現)北海道立北見農業試験場
-
牧野 司
北海道立根釧農業試験場
-
藤井 弘毅
(現)北海道立北見農業試験場
-
山川 政明
北海道立根釧農業試験場
-
澤田 嘉昭
(現)北海道立畜産試験場
-
澤田 嘉昭
根釧農試
-
山川 政明
北海道立滝川畜産試験場:(現)北海道立畜産試験場
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