MRIのT2強調画像にて低信号を示した転移性脳腫瘍
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概要
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転移性脳腫瘍はMRIのT2強調画像で一般に高信号域として描出される.今回われわれは,T2強調画像で低信号を呈した腺癌脳転移例を経験したので報告する.症例は69歳,男性.1999年9月にS状結腸癌にて手術を施行された.2000年5月中旬ころから理解不能な言動とふらつき歩行にて発症し当科に入院となった.初診時,JCS3で不穏状態であり,感覚性失語と右片麻痺(MMT4/5)が認められた.単純CTでは左側頭葉周囲に強い浮腫を伴う直径約5cmの高吸収域を認めた.MRIのT1強調画像では白質とほぼ等信号を呈し,T2強調画像では中心部に壊死と思われる高信号域が一部存在するものの,大部分は低信号を呈していた.Gd-DTPA投与後の画像では辺縁が不規則に増強された.診断の確定と病巣の摘出を目的に左前頭側頭開頭にて肉眼的に全摘出した.組織学的には比較的分化傾向を示す高円柱上皮腺癌を認め,S状結腸癌の転移と診断された.組織中に明らかな出血や石灰化は認められなかった.PAS染色およびalcian blue染色では腺腔内に陽性に染まるムチン(粘液)の存在が確認された.ムチンにより組織内の結合水分画が増加することによって,プロトンの自由な動きが低下してT2緩和時間が短縮され,病巣がT2強調画像にて低信号域として描出されると考えられる.したがって,T2強調画像にて低信号を示す転移性脳腫瘍の鑑別に際しては,従来から知られているメラノーマ,出血あるいは石灰化を伴う腫瘍に加えて,本症例のように消化器系の腺癌の転移の可能性も念頭に置かなければならない.
- 日本脳神経外科コングレスの論文
- 2002-10-20
著者
-
松谷 雅生
埼玉医科大学脳神経外科
-
西川 亮
埼玉医科大学医学部脳神経外科
-
安達 淳一
埼玉医科大学脳神経外科
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中島 弘之
埼玉医科大学国際医療センター 脳卒中センター 脳卒中外科
-
中島 弘之
埼玉医科大学脳神経外科
-
西川 亮
埼玉医科大学脳神経外科
-
松谷 雅生
国立がんセンター病院脳神経外科
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