タイ国産キク科植物の分類学的研究6
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概要
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ハマグルマ属Weeliaは熱帯・亜熱帯に多くの種が分布する.未だ総合的に検討されていないために,不明の点が多く,種数を70種位に取扱う意見(STUESSY,1977)から100種位とするもの(KOSTER, 1979)まである.我国にはネコノシタ,ハマグルマ,オオハマグルマ,キダチハマグルマ,オオキダチハマグルマ,クマノギクがあり,いずれも海岸生であるが,Wedelia montana (BL.) BOERL. (ジャワ産)とか,W. wallichii LESS.(ネパール・中国南部・タイ国産)と呼ばれるものは山地生である.(Fig. 3).これらの山地生の種の果実は楕円体で,熟すると上部1/4ほどを除いて褐色となる.その褐色の部分に小さな黄白斑があり,これが数個集まって,不規則な模様を示すことが多い.(Fig. 1左).W. wallichiiはW. montanaに酷似しているとして記載されたように,果実の大きさ(前者は2-4mm長,後者は6mm長)を除いては区別しにくい.W. wallichiiについて多数の標本を検討したが,4mmをこえる大きな果実を見出し得なかった.そこで,果実の大きさにみられた差と地理的分布の非連続性(Fig. 3)を考慮して,両者が変種関係にあるとみなした.タイ国の植物目録(KERR,1936)の中で記載されているWedelia wallichii var. scaberrima C. B. CLARKEのタイプはビルまで採集された標本Wallich 3208aである.この標本の果実について,キュー植物園のC. JEFFREYさんに問い合わせたところ,ここで新変種としたW. montana var. pilosa H. KOYAMAの果実とは異なるとの返事を得た.新変種は第一図左の果実を有し植物体全体に多細胞からなる長軟毛が生えている点で,var. montanaやvar. wallichiiから区別される.Wedelia thailandica H. KOYAMAは第1図右の果実を持つことによって特徴づけられ,葉の両面に開出粗毛を有し,根茎が肥厚する多年草である.(Fig. 2)なお,KERRがW. wallichii var. scaberrimaのもとに引用しているタイ国産の標本の一部はここで記載した新種と新変種と同定されるものである.
- 1985-11-30
著者
-
小山 博滋
Department of Botany (KYO), Faculty of Science, Kyoto University
-
小山 博滋
Department Of Botany National Science Museum Tokyo
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