クルミ目の核形態と進化(総説)
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概要
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ロイプテレア科とクルミ科からなるクルミ目の核形態の特徴とその進化を,総説としてまとめた。エンゲルハルディア連のEngelhardia serrataの核形態については初めて報告する。これまで,唯一の属Rhoipteleaからなるロイプテレア科と,4連8属からなるクルミ科のうち,4連5属の核形態が明らかとなっている。これまでの報告をまとめた結果,両科の核形態は均質であることが判った。すなわち,両科は分裂期中期染色体の核型が類似していること及び互いに基本数x=16(但し,ノグルミ属のx=15を除く)をもっている。これらの核形態を各科内,両科間及び近縁なヤマモモ科,カバノキ科,Ticodendraceae及びモクマオウ科の核形態と比較した。その結果,ロイプテレア科とクルミ科が近縁であることが支持されると共に,クルミ目のx=16は,ヤマモモ科(x=8),カバノキ科,モクマオウ科の一部の属と共通の祖先群からの四倍体起因と推察された。また,詳細な分裂期中期染色体の核型から,ロイプテレア科及びクルミ科の中で単系統をつくるヒコリ連とクルミ連とは,他の連とは異なる系列にあることが支持される。しかしながら,この仮説を確証するためにはCyclocarya, Alfaroa,及びOreomunneaの研究が期待される。クルミ目におけるこれまでの研究から,核形態はクルミ目の科内や科間の属間(属群)で均質であることが判った。このことは,クルミ目の近縁群でも核形態が属や科内で均質であることを示唆しているものと思われる。
- 日本植物分類学会の論文
- 2000-02-28
著者
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