面発光レーザの低しきい値・高温動作化
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概要
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面型レーザの低しきい値・高温動作化は、光通信システムや光インタコネクションへの応用を考えた時極めて大きな課題である。これまで、0.8-0.98μm帯では低しきい値で100℃し以上の高温まで動作するレーザが実現されている。一方、波長1.3-1.55μm帯では、実用に耐える特性のレーザは実現されていない。ここではまず、0.8-1.0μm帯のレーザについて、いかにして低しきい値・高温動作が実現されたかを紹介する。次に波長1.3μm帯のレーザについて低しきい値・高温動作を実現するための新しいアプローチを紹介する。0.8-1.0μm帯では高い利得の歪量子井戸が活性層として利用できること、また、GaAsとAlAsをペアとする高い反射率の多層膜ミラーが利用できることから、ミリアンペア程度のしきい値を持つレーザは比較的容易に実現できる。技術的要点として素子の低抵抗化、面内での活性領域への効率的な電流集中化、そして多層ミラーからなる共振器と歪量子井戸活性層との波長のマッチングが挙げられる。一例として、AlAsの酸化物を用いて電流を面内で効率的に集中化させて100μAを切る低しきい値のレーザが報告されている。また、波長マッチングを適切に設定することで、20〜80℃でしきい値がほぼ一定で160 ℃まで動作するレーザが得られている。1.3μm帯で十分な特性が実現されていない理由としては、活性層の利得が0.8-1.0μm帯に較べて小さいこと、InP基板を用いた場合、ミラーの反射率を大きくするのが困難であることが挙げられる。この不利な条件の下で性能を向上させるべく、電流の集中化のための構造の工夫、熱伝導率の良い誘電体材料を用いた多層膜ミラーの導入等の努力がおこなわれ、14℃でのCW発振が報告される所まで研究が進んできた。近年はInP基板上の不利な点を本質的に改善する方法として、GaAs/AlAsの高反射率ミラーとInP基板上の活性層領域とを張合せる方法や、InPとGaAsの中間の組成のInGaAsの基板を開発して、高利得の歪量子井戸と高反射率のミラーを同時に実現することを目指した研究が行われている。早晩波長1.3μm帯でも低しきい値・高温動作のレーザが実現されることが期待される。
- 社団法人電子情報通信学会の論文
- 1995-03-27
著者
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