奈良漬製造工程から分離した耐塩性酵母の特徴
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概要
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奈良漬製造工程中に出現する酵母菌類の由来を検討し, そのmicrofloraと分離株の中から耐塩性酵母を同定しその特徴を考察した.分離試料は畑地土壌(徳島県板野郡監住町), 白瓜(桂白瓜), 塩瓜(コンクリートタンク中で25%食塩水に3〜6カ月浸漬放置), 下漬醪(食塩16%含有)より最終醪である上揚漬(酒粕60 : 味淋粕40,約6ケ月室温で木樽放置)醪までの3工程の醪, 計7試料を用いた.分離菌株の培養にはglucose-peptone-yeast extractのnutrient mediumを 用いた.分離株同定はLodderの分類書(The yeasts1971年)に準じた.各試料の1g中の分離株は土壌中ではTorulopsis属9株(75%), CandidaとCryptococcus属夫々1株と未同定1株を得た. 白瓜中の分離した酵母数は土壌より比較的多く出現しそれらの株は主としてTorulopsisとSaccharomyces属であった.下漬醪は塩瓜や中漬醪から由来する酵母によって汚染され55%はTorulopsis属であった.上漬, 中漬醪は塩瓜や下漬醪のように上揚漬や上漬醪の酵母によって汚染され, 上揚漬から分離した65株のうち28株(42.4%)はTorulopsis属, 22株(33.3%)はSaccharomyces属であった.上揚漬に出現するTorulopsis属の多くはおそらく木樽で押粕や味淋粕の熟成期間中に汚染されたものと考える.上揚漬醪の分離株は食塩無添加培地で発育することが出来るが, 5% NaCl 培地ではほとんど発育しない.これらの菌株はSaccharomyces属に分類した.上漬, 中漬醪の分離株は10%〜15% NaCl添加培地で発育する細胞が上揚漬醪に比較して多く, これらの株はCandida, Cryptococcus, Torulopsis属に分類した.下漬, 塩瓜では25% NaCl濃度でも発育可能な株もみとめられこれらの殆んどはTorulopsis属に分類した.次に分離株中で耐性株SA-4-35(T.etchellsii), SA-3-7(T.glubrata)とそれらの株と確認されたT.etchellsii OUT 6322,T.glabrata OUT 6189の4株を用い食塩存在下で糖類の醗酵性を調べた. SA-4-35株では10% 添加培地でglucose, maltose, melibiose, cellobioseの醗酵能が増強されOUT 6322株より高い結果を得た.SA-3-7株では無添加においてtrehaloseの醗酵能はOUT 6189株に比べ低い値を示しmaltose, melezitoseにおいてはOUT 6189株に比較して食塩の影響は少い.このような現象は酵母の分類において不正確さをおこすかも知れない.次にSA-4-35(halotolerant), SA-3-15(halophilic), SA-3-22(low-halophilic), SA-1-66(halophobic)の株を用いglucoseのかわりに10%, 60%, 80% fructose添加によるgrowth responsesを調べた結果sa-4-35ではfructose 高濃度においても発育が認められた.塩類の影響では食塩以外に2M KCl, 2M MgCl_2 4.5×10^<-8>M CdCl_2,2×10<-4>M CuCl_2を用いて実験した.その結果SA-4-35株はすべての塩類に対して耐性を示した.SA-1-66株はNaCl, KClに対し低い耐性を示しMgCl_2やCuCl_2では発育が阻害された.更に培地中に高濃度のNaCl, KCl, fructoseによる耐塩性株の細胞の変化についてhalotolerant株ではcell sizeが小さくなるものと全く変化しない株に分れた.Low-halophilic株ではすべて細胞が小さくなる現象を認めた.
- 公益社団法人日本生物工学会の論文
- 1974-04-25
著者
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