独立栄養性細菌による除錆機構の観察
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概要
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Thiobacillus 属, Ferrobacillus 属等の無機栄養性細菌は, バクテリア・リーチングの分野で研究され, 報文も多い. しかし, これらバクテリアの生化学的作用機構は複雑多岐であり, その詳細は不明な点が多い. 本研究はこれらのバクテリアの機能を他の工業的分野へ応用することを目的をして, 工業的除せい法への応用を試みたものである. 工業的除せい法は高濃度の鉱酸によりおこなわれているが, さび, 或いはさび近傍の鉄を溶解することにより除せいするものであるため, その効果は漸次薄れていく. 効果のなくなった溶液は廃棄するか, 能力を維持するために新たな酸を追加していく必要がある. このため公害面からも問題があり, クロースド・システムによる除せい法が要請される. そこで, 第一鉄をエネルギー源として独立栄養的に生育しうる鉄酸化細菌WU-66B菌を秋田県同和小坂鉱山廃水から分離し, その菌学的性質からチオバチルス・フェロオキシダンスと推定し, この菌を培地に接種して30℃で振とう培養し, その培養液に鉄片を浸漬して検討した. さび鋼鉄を培養液に浸漬すると, さび近傍の鉄が侵食され, さびが剥離していくことからその作用機構を観察し, バクテリアのエネルギー取りこみの結果生ずる硫酸第二鉄の作用が主反応であることを培養液の鉄溶解能とその組成変化, および活性化エネルギー(培養液, 硫酸第二鉄溶液に浸漬した場合, いずれも4.35 kcal/mol)の面から明らかにした. また, 培養液中に菌体が存在すれば除せいを続けることにより培養液の鉄溶解能が再生持続されることを確認した. これらの点から, 次のサイクルを想定し, 菌体をさび近傍の鉄との間にこのようなミクロサイクルが形成され, 効果的に除せい作用がおこなわれていることを推定した. 従って, 本法による除せい法では菌体が活性に作用することにより, さびをとる効果を長期にわたって再生, 持続することができ, いわゆるクローズド・システムによる除せい法の可能性を見出した. [figure]
- 1975-06-25
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