土石流堆積によるカラマツ-シラベ林の植生変化

概要

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富士山亜高山帯の一次遷移の途中相であるカラマツーシラベ林の林床に上石流による土砂礫が堆積した後の植生変化を検討した。根元が埋まった樹木の中で, 極相構成種は88%以上が枯死するが, 初期・途中相構成種は13%以下が生存する。生存木は埋まった幹から不定根を出すか元の根から地表に向かって新しい根を伸ばすが, 枯死木にはこれらの痕跡が稀である。旧地表付近は土壌水分が多く, 酸素不足が推定された。土石流堆積裸地の初期相の個所にはカラマツとシラベの多数の稚樹と少数のヤハズハンノキ, ダケカンパなどの稚樹が侵入しているが, 13年前ごろの古い堆積地ではヤハズハンノキ, ダケカンパの若木が上層を優占し, カラマツは衰退してヤハズハンノキ・ダケカンパーシラベ林の途中相が形成される。このように土石流堆積地の一次遷移は火山放出物堆積地のそれとは同じ裸地上でも異なってくる。その理由は土壌条件が周辺の森林形成によって湿性化し, ヤハズハンノキやダケカンパの分布が拡大したこと, またこれらの樹種はカラマツに比し生長が早いためである。
日本森林学会の論文
1980-03-25